胸骨傍リンパ節転移、皮膚・大胸筋浸潤がありますが、どの様に治療を始めたら良いでしょうか?

2021年7月20日  , 

初めまして、66歳女性で先日乳癌告知された際に、既に胸骨傍リンパ節転移が腫れ、腫瘍は広がり5cm以上、皮膚、大胸筋にまで浸潤している可能性が高いと診断されました。
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浸潤性乳管癌(invasive ductal carcinoma) scirrhous type (硬性型)
ER(+)(>90%), PgR(-X0%), ki67<5% HER2 1+ ルミナールA
腋窩リンパ節 MRIでは腫大ありそうだがUSでは不明瞭
腫瘍の位置はBD
MRI 右D〜C領域にかけて広範な病変
右腋窩Level I に数ミリ大のリンパ節腫大2個あり、有意な腫大ではないがやや円形で転移の除外が必要
左9時に軽度造影効果が目立つ部分あり、小さなDCISを見ている可能性があり経過観察が必要、腫瘤は可動性あり、皮膚露出なし。
腫瘍の大きさは特定できる感じではない、5cmは超えている。
リンパに行ってない可能性があるが、皮膚まで露出、浸潤してるとなるとT4 なのでステージ3の可能性
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本日、急遽PET-CTを撮りましたが今後の治療方針で悩んでおります。医師からは既に広がっているので再建は難しいと言われております。

1:再発リスクを抑えたいので全摘を一刻も早く行いたい気持ちですが、術前ホルモン治療を行う意味はありますでしょうか。

2:HER2陰性ホルモン陽性ですが、胸骨傍リンパ節、大胸筋の腫れなどを考えると、HER2陰性でも術前化学療法もあり得るのでしょうか。(先に全摘手術を行う場合のメリットデメリットもお伺いしたいです)

3:手術前のMRI、エコー、生検の段階で、胸骨傍リンパ節、皮膚、大胸筋に浸潤していることは診断がつくものでしょうか。また昨日PET-CTを受けましたが、PETでもそれらの浸潤の確定判断はでないものでしょうか。

4:大胸筋に浸潤している場合、筋肉の一部を切除するのか、それとも術前化学療法などで小さくしてみることで筋肉を切らずに済むこともあるのか、その場合再発リスクは高まらないものでしょうか

告知と同時に進行していることが分かり非常に不安な思いでおります。
今後の治療方針で、直ぐに全摘手術なのか、それとも術前治療をするべきかなど、ぜひご助言を頂けましたら大変幸甚です。何卒どうぞ宜しくお願い申し上げます。

局所進行乳がんの様で、早急に治療が必要です

1:再発リスクを抑えたいので全摘を一刻も早く行いたい気持ちですが、術前ホルモン治療を行う意味はありますでしょうか。
→術前ホルモン療法は即効性がないので、まずは化学療法からになると考えます。PgR(-X0%)であるため、ホルモン療法の治療抵抗性もあるかもしれません。

2:HER2陰性ホルモン陽性ですが、胸骨傍リンパ節、大胸筋の腫れなどを考えると、HER2陰性でも術前化学療法もあり得るのでしょうか。(先に全摘手術を行う場合のメリットデメリットもお伺いしたいです)
→局所進行であれば術前化学療法を選択することは大いにあると思います。私であれば、まずは術前化学療法から開始します。まずは、手術よりも一刻も早く全身治療を、と考えます

3:手術前のMRI、エコー、生検の段階で、胸骨傍リンパ節、皮膚、大胸筋に浸潤していることは診断がつくものでしょうか。また昨日PET-CTを受けましたが、PETでもそれらの浸潤の確定判断はでないものでしょうか。
→ある程度は診断がつきます。MRIは局所を見るためですので、大胸筋浸潤などの参考にはなります。PETは全身転移を見るものですので、局所はあまり参考にはなりません。

4:大胸筋に浸潤している場合、筋肉の一部を切除するのか、それとも術前化学療法などで小さくしてみることで筋肉を切らずに済むこともあるのか、その場合再発リスクは高まらないものでしょうか

→元々、浸潤のあったところは術前化学療法で縮小しても切除すると思います。画像で消えていたとしても、顕微鏡レベルでは残っていることはよくありますので。

まずは、初期治療を早急に始めてください

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行