断端陽性でも追加手術は必要ないのでしょうか?

2021年9月11日  , 

手術日2021.7月 左乳癌 部分切除術
SNB方法ICG単独
Encapsulated papillary carcinoma with invasion
T1N0M0  8×12×6mm
ER90% PgR90% HER2陰性 グレード1
核異型2 分裂像1 MIB1 40%
浸潤径0.3mm 脈管侵襲なし
リンパ1/1(SN1/1)マクロ転移0
断端陽性 陽性近接切片数2
断端にかかる腫瘍成分非浸潤癌
治療方法 SLN1/1(ITC)でpN0、乳房照射 タモキシフェン

タモキシフェンは服用開始しています。
主治医のいる病院とは別の、自宅近くの病院で放射線を近く開始する予定ですが、ここの医師に断端陽性について追加手術などは?と聞かれ不安になってしまいました。主治医には、切り取った近くに癌があったから放射線追加にしましたと説明されたのですが…。
追加手術は考えなくて良いのでしょうか?

ご質問ありがとうございます。

断端診断には施設間差があり、断端陽性には多様なケースが存在します。例えば、明らかに断端に腫瘍が露出しているのか、切除断端の近傍まで腫瘍細胞が存在するのか(断端近接)でも意味合いが変わってきます。また、断端陽性であっても必ずしも追加切除の適応となるわけではなく、断端状況に加えて癌の性質等も考慮して総合的に判断されます。

今回、主治医の言われた「切り取った近くに癌があった」というのは、断端近接という意味にもとれます。また、断端にかかる腫瘍成分が非浸潤癌とのことですので、その点も含めて追加切除よりも放射線治療選択されたのではないかと推察いたします。

なお、断端陽性/近接の症例に対して放射線治療を行う場合には、通常の全乳房照射に引き続いて、もともと腫瘍が存在していた部分に追加照射(ブースト照射)を行うことが一般的です。したがって、今回はブースト照射の適応はあるものと考えます。

いずれにしましても、追加切除に関してご不安があるようでしたら、今一度、主治医とよくご相談いただくのが良いのではないかと思います。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの

 

追加記載:

日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインでは、「浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌に対する乳房温存手術において、断端陽性と診断された場合に外科的切除は勧められるか?」と言うクリニカルクエスションに対して、「乳房温存手術において切除断端陽性と診断された場合に外科的切除を弱く推奨する」となっています。この場合の「切除断端陽性」の定義は、「切除断端に浸潤癌もしくは非浸潤癌の露出があること」となっていますので、日本の「切除断端陽性=切除断端から5ミリ以内に乳癌が存在する」の基準と少し異なっています。ご自分がどのような状態か詳しくお聞きになってからまた考えられた方が良いと考えます。

ご不安ならセカンドオピニオンを受けられてもいいのではと思います

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行