術前化学療法で薬剤性間質性肺炎になりました。これから放射線治療をするのですが、やめた方がいいでしょうか?

2020年1月8日   

トリプルネガティブの乳ガン  ステージⅠaで、術前抗がん剤を行いましたが、途中で薬剤性の間質性肺炎と肝臓障害を起こしたため、途中で中断し、左胸部分切除手術を行いました。現在、間質性肺炎はほぼ回復しております。この後、放射線治療を予定しているのですが、間質性肺炎を経験していると、重篤な症状になる可能性があると説明を受け 治療を躊躇しております。担当の医師も、今まで1人しか経験がなく、データも無いので  リスクは大きくはないと思うが 分からないといった様子です。薬剤性の間質性肺炎でも  放射線治療を受けたほうがいいのか、ヒントをいただけると助かります。よろしくお願いいたします。

ご質問ありがとうございます。放射線肺炎は化学療法を同時併用した場合や照射野に含まれる肺野の容積が大きい場合にリスクが増加するとの報告があります。また、時に放射線が照射されていない部位にも肺臓炎が出現することがあり、これはBOOP様肺炎と呼ばれています。このBOOP様肺炎のリスクファクターとしては、高齢やホルモン療法の同時併用などが報告されています。しかしながら、いずれも明確な因果関係が示されているものはありません。少なくともこれまでに薬剤性肺炎の既往歴が放射線肺炎のリスクであるという報告はなく、ガイドライン上も禁忌とはされておりません。乳房温存術後に放射線治療を行う目的は、再発リスクの低減にあります。放射線治療を行った方がよいかどうかは、放射線肺炎を来すリスクがあるというデメリットと放射線による再発リスク低減というメリットのどちらが大きいかという点を踏まえて考える必要があります。現在、ほぼ間質性肺炎は回復しておられるとのことであり、トリプルネガティブ乳がんであることや50代とお若いことを考えると、放射線治療を行い、再発リスクを低減させるメリットの方が大きいものと考えます。ただし、現在もステロイドを内服されているなど薬剤性肺炎の治療中である場合や症状が見られる場合には、治療終了後や症状改善後の放射線治療が望ましいと考えます。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの