術後治療として、化学療法なしのハーセプチン単独療法でも大丈夫でしょうか?
今年3月に温存手術をしました。
ステージI(腫瘍7ミリ) HER2 3+ グレード1 Ki67 3% のトリプルポジティブです。主治医から再発率の低いタイプなのでハーセプチン単独(抗がん剤
ご質問ありがとうございます。
HER2陽性乳癌に対する術後の治療は、過去の臨床試験の背景から、リンパ節転移陽性や浸潤腫瘍径が1cm以上の場合に、ハーセプチンと抗がん剤を行うことが推奨されています。しかし、1cm未満でもHER2陽性の場合は陰性の場合と比べると再発率が高く、比較試験のような高いエビデンスではありませんが、術後にハーセプチン(+抗がん剤)を行う方が予後を改善させることが示されています。このため、浸潤径が5mm以上の場合には、ハーセプチン1年間とパクリタキセル毎週12回を行うことが多いです。ただ、質問者様の場合、HER2陽性であってもグレードやKi-67が低く、元々再発率が低いと予測される状況なので、副作用を伴う抗がん剤を行うべきか悩むところです。ちなみに、再発リスクを予測するPREDICTという海外のツールでは、質問者様の場合、10年生存率が手術のみで94%、ハーセプチンと抗がん剤併用を行うと仮定すると96%になりました。デメリットである副作用は、タキソールではしびれが最も問題となりますが、治療中約3%の方に日常生活に支障がでるようなしびれがみられ、治療終了後もなかなか改善しないこともあります。
このようなことから主治医の先生はハーセプチンとホルモン療法を勧められたのだと思います。治療の決断の参考になれば幸いです。
文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子