ホルモン陽性HER2陰性乳がんの術後治療のことで悩んでいます

2020年6月18日   

術後9年半を経て対側乳癌になり、抗がん剤治療をすべきか悩んでいます。
現在48歳です。39歳時、左胸乳がんを部分切除し放射線治療を受けました。
非浸潤性乳管がんで主治医から、術後は放射線治療のみで良いと言われたので、術後9年以上ホルモン治療は全くしていませんでした。術後9年たち(48歳、閉経していません)、一年に一度、検査に通っていたのですが、昨年晩秋頃の検査の際に「対側(右)に気になる部分がある」と医師から言われて半年後の受診を指示され、今春受診したところ、対側も乳がんになっていました。先日、全摘手術を受け、術後の病理診断の結果は、浸潤性乳管がん、12×8×5mm、ER陽性(ほぼ100%)、PgR陽性(5%)、HER2陰性(score0)、リンパ節転移なし(sn:0/2)、リンパ管侵襲あり(ly1)、 静脈侵襲は明らかでない(0)、Ki67:10%, 核異型度1,組織学的異型度2でした。初発年齢が若く、異時性両側乳がんでもあるので、今回、BRCA1、BRCA2の遺伝子検査を受けましたが、異常なしでした。
今回、医師からは、タモキシフェン服用(5~10年間)のみの術後治療を提案されています。
そこで、お教えいただきたいのは、
(1)抗がん剤は不要でしょうか?
(2)リュープリンは効果がなく不要なのでしょうか?
(3)プロゲステロン陽性率の低さは、術後治療方法の選択に影響しますか?
(4)オンコタイプDXという検査を受けてみようかと検討していますが、再発リスクがいくつ以上だったら抗がん剤をした方が良い、という一般的な基準はあるのでしょうか?

たくさんの質問をいただきましたので、質問を簡潔にして答えさせていただきます。

(1)抗がん剤は不要でしょうか?→どの症例でも浸潤癌であれば絶対に再発、転移しないという保証はありません。化学療法をすることでいくらか再発率を下げられると言うことです。期待したほど下がらないのであれば、化学療法を受けないという選択になります。腫瘍径が12ミリでluminalAですので、化学療法の上乗せ効果は低いと考えられます。ですから、化学療法を推奨しない先生が多いと思います。

(2)リュープリンは効果がなく不要なのでしょうか?→48歳なので上乗せ効果はほぼないと考えます。タモキシフェンだけが推奨されます

(3)プロゲステロン陽性率の低さは、術後治療方法の選択に影響しますか?→エストロゲンレセプター陽性でもプロゲステロンレセプター陰性であれば治療抵抗性と考えられていますが、5%であれば陽性ですので、影響するとは言えないと思います
(4)オンコタイプDXという検査を受けてみようかと検討していますが、再発リスクがいくつ以上だったら抗がん剤をした方が良い、という一般的な基準はあるのでしょうか?→高であれば化学療法をお勧めします。中間、低ともに化学療法の上乗せ効果は少ないという結果ですので。

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行