マンモトーム生検で非浸潤性小葉がんと診断されました。経過観察でもいいのでしょうか?

2020年7月4日   

マンモトームで境界病変という結果でした。
非浸潤性小葉がんです、何年も経過観察している人もいる病気で
と説明されました。
境界病変でがんを告知できるのでしょうか?
経過観察でよいのでしょうか?
温存手術はできるでしょうか?
温存の時は放射線もあてるのでしょうか?

ご質問ありがとうございます。非浸潤性小葉がんは「がん」という名前の付いた病変なのにほんとに経過観察でいいのか!?と思われるのはもっともだと思います。今からできるだけわかりやすく、ちゃんと納得・安心していただけるようにお話ししたいと思います。
 非浸潤性小葉がんそのものは経過観察で問題のない病変です。ほんとうに病変のすべてが 非浸潤性小葉がんであればその病変は放置していても問題ないため手術は不要です。「病変のすべてが」というところがキーワードです。(例外があって、生検で多形型非浸潤性小葉がんに分類される病変の場合は手術治療が必要ながんの可能性が高いため病変の摘出手術を勧め、病変の全体像を見た最終病理診断のもと今後の治療方針が決まってきます。)
 非浸潤性小葉がんは、浸潤性乳管がん、浸潤性小葉がんや非浸潤性乳管がんなどの手術治療が必要な病変や、異型乳管上皮過形成(ADH)や平坦型乳管上皮異形成(FEA)などのいわゆる境界病変や、乳腺症をはじめとする良性病変などが、一緒に存在していることも多いということはよく知られたことです。つまり、画像検査や臨床症状も合わせて考え、より悪性を疑う所見の場合は同時にがんが存在している可能性が高いと判断して、 がんの存在を確認することを目的に病変全体を手術で摘出することを主治医の先生は勧めます。逆に画像検査や臨床症状 も合わせて考え 、より良性を考える所見の場合は同時にがんが存在している可能性は低いと判断して、定期的な経過観察を主治医の先生は勧めます。
 また別にもう一つ考えておかないといけない問題があります。 生検で非浸潤性小葉がんが判明した場合、今後新たな乳がんが発生するリスクが上昇することも知られています。
NCCNガイドラインというアメリカのガイドラインでは、非浸潤性小葉がんの既往があり、家族歴などで生涯乳がんになる確率が20%以上と計算される人の場合は、マンモグラフィーやMRIを使った毎年の検診をすべきとされており、発症リスクを下げるための手術や薬物療法をすることも考えてよいとされています。
具体的にご質問のお答えですが、
①境界病変は「がん」ではありませんのでがんは告知できません。しかし境界病変には今後がんになっていく病変であったり、がんの存在の可能性を示唆する病変であったり、診断者が変わるとがんと診断される可能性がある病変などが含まれます。
②病理所見だけではなく画像所見、臨床所見と照らし合わせて、浸潤がんが疑われるような所見がなければ経過観察も可能です。しかし、それぞれの所見が一致しない場合や、がんをより疑う所見がある場合は摘出手術を行い病変全体を最終病理検査で見ることが大切です。
③乳腺切除量としては結果的に温存手術と大きくは変わりません。このことからは「温存手術はできる」という答えになるんでしょうか。しかし、浸潤性小葉がんでは、画像検査から想定される範囲よりもさらに拡がっていることが多く、注意が必要です。
④ 上記③の手術を行い摘出した病変全体をみた最終病理診断で「浸潤がん」と診断されれば術後に放射線を温存した乳房へあてることをすすめられるでしょう。また最終病理診断で良性病変や境界病変もしくは非浸潤性小葉癌と診断された場合は放射線治療は必要ありません。
 現実には、針生検やマンモトーム生検を行い非浸潤性小葉癌の診断で経過観察をお勧めして毎年検査に来られる方もおられますが、なかには毎年の経過観察が大変だから病変を手術で摘出したいといわれる方もおられます。いずれを選択するにしても主治医の先生とよく相談して決めることが大切と思います。また何か疑問に思う点、不安に思う点がありましたらご質問いただければと思います。
文責:島の病院おおたに外科 安井大介