浸潤性乳管癌に非切除を選択してもいいのでしょうか?行われている臨床試験についても教えて下さい
2020年9月17日 手術
マンモトーム生検にてER90%以上、PgR90%以
主治医から所見はおとなしい癌でこれから早期に進行して浸潤癌になるようには思わないからと臨床試験JCOG1
非切除はありがたい治療ですが、ホルモン剤5年でがんは消失する
途中経過でもこの試験への状況をコメントいただけませんでしょう
・非浸潤性乳管癌(DCIS)細胞は乳管内に留まり、体の他の部分には広がりません。この特性により、DCISは「浸潤性」乳がんとは大きく異なります。しかし、現在は浸潤癌と同じ手術や放射線治療がおこなわれており、乳房の変形や創が一生残ってしまうというデメリットがあります。
・DCISは一つの病態ではなくさまざまな「グレード」があり、浸潤がんになる可能性が最も低いDCISは、低リスクDCISと呼ばれます。低リスクDCISは通常、グレードIまたはグレードIIであり、ホルモンに感受性があり、症状を引き起こさないDCISであると考えられています。
・低リスクDCISは非常にゆっくりと成長するため、女性の寿命中に健康上の問題を引き起こさないことを示唆する証拠が増えており、過剰な治療が行われている可能性があると考えられています。
・主治医の先生がご提示された臨床試験に参加することができる患者さんは、本来女性の寿命中に健康上の問題を引き起こさないと考えられるDCISであり無治療でも経過を見ることが可能と考えられる状態です。実際、海外では同様の患者さんを無治療で経過観察するという臨床試験が進行中です(英国、EU、米国)。
・しかし日本での低リスクDCISの試験ではそこにホルモン療法(ここではタモキシフェン)の抗腫瘍効果を加えてさらに良い結果がでることを期待したものです。
海外の臨床試験ではごく短期間(3~6ヶ月)ホルモン療法を服用しただけでも約1割のDCISが消失したという報告や、DCIS自体のグレード低下や増殖する能力が低下したという報告もありますし、さらにホルモン療法(ここではタモキシフェン)には内服終了後も効果が持続するという持ち越し効果があることが知られており、5 年間の内服終了後も10 年程度は効果が持続すると言われています。反対側の乳癌の発生も低下させます。
そのため、5年内服終了後は診察や画像検査などで経過をきちんと観察することで問題ないと考えています。
・現在、日本や海外の試験はいずれも進行中の試験のため途中経過での結果報告はありませんが、低リスクDCISは急いで手術を要する状態ではないため、主治医の先生とよくご相談して治療を選択して下さい。
文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行