アバスチン+パクリタキセルが効き過ぎて皮膚転移があったところの一部に肋骨が見え始めました。抗がん剤が効きすぎてこうなったとのことですが治療を中断すべきなのでしょうか?

2020年8月20日  , 

昨年、トリプルネガティブで左胸全摘しました。術後半年でリンパ節転移、左胸に皮膚転移しました。抗がん剤治療を行い、標準治療といわれるものは全て行いました。アバスチン+パクリタキセルをやっていたのですが、皮膚転移の一部に肋骨が見え始めました。主治医いわく、抗がん剤が効きすぎて、癌細胞と一緒にいい細胞もやっつけてしまいこうなった。放射線治療をやっている部分にアバスチンが使うことで、まれに細胞を破壊することがありこうなった。いずれにしても、このままでは穴が開く可能性があるため、治療はできない。正常皮膚が覆うまで3~4ヶ月かかると言われました。皮膚移植の話をしたところ、適応ではないと言われました。かなり危険な状況のため、自宅には帰れない。緩和ケア病院への転院の話がありました。今の状況で何か出来ることはないのでしょうか?もし、穴が開いたら胸水が出てくると言われましたが、出てくるのを見るだけで、何の処置もしてもらえないのでしょうか?あるとしたら、どんな処置がありますか?

 

 

アバスチンの合併症として皮膚障害、創傷治癒遅延を来たすことがあり、重症例では傷がある部分に一致して皮膚潰瘍や胸壁穿通を来たした報告例もあります。放射線治療を受けている皮膚は放射線による障害を受けているため、アバスチンの合併症の皮膚障害が強く出る可能性があります。担当医の先生が「癌細胞と一緒にいい細胞もやっつけてしまいこうなった。放射線治療をやっている部分にアバスチンが使うことで、まれに細胞を破壊することがありこうなった。」と説明されていますが、アバスチンの合併症として矛盾しない内容だと思います。このような場合に皮膚移植をしても移植した皮膚が生着せずに脱落してしまう可能性が高いので危険です。担当医の先生や皮膚科医の先生に相談され、皮膚の上皮化を促進する保存的治療を受けられるのが安全と考えます。正常皮膚が覆うまでは、確かに3~4カ月はかかるかもしれません。この間の抗がん剤治療に関しては、皮膚障害が悪化して胸壁穿通を来たす危険があるので十分な注意が必要です。また、胸水貯留に関しては、呼吸苦などの症状がある場合は胸水排液、胸膜癒着療法が可能な場合もありますので、必要性も含めて担当医の先生に相談してみて下さい。いずれにしても、全身状態と皮膚の状態を観ながら、症状緩和のための治療を含め、無理のない治療を担当医の先生とよく話し合ったうえで受けられることを推奨します。

 

文責:県立広島病院乳腺外科 尾崎慎治