オカルト乳がんで腋窩リンパ節郭清術を行いました。間質性肺炎があるのですが、放射線治療を受けた方がいいでしょうか?

2020年6月17日   

昨年間質性肺炎と診断され、CTを撮った所、オカルト乳癌がわかり今年になって右腋窩リンパ節郭清手術と6回の抗がん剤治療(TCHP療法)を無事に終えました。次に放射線治療とホルモン剤服用の予定となっています。間質性肺炎の治療は放射線治療後に始める予定です。しかし、間質性肺炎のあるものに放射線治療をすると間質性肺炎が悪化する可能性があると聞き、怖くなってきました。照射は当初は乳房にもあてる予定でしたが、危険性を考慮し肺を避け鎖骨下と首を中心にする事になっています。放射線治療を受けた方がいいでしょうか?

ご質問ありがとうございます。

通常の乳癌の場合、鎖骨領域への照射の適応はリンパ節転移の個数や病理結果などにより判断します。今回、手術の詳細やリンパ節転移の個数、病理結果などが不明ですが、鎖骨領域への照射を検討されているとのことですので、鎖骨領域への照射を行った方が良いと判断される病理結果であったとの前提で回答させていただきます。

一般的に乳癌の術後照射で重篤な放射線肺炎が生じることはありません。ただし、乳癌の術後照射に関わらず、間質性肺炎のある方は肺への照射線量が通常であれば問題とならない程度であっても、照射により間質性肺炎の急性増悪を来すリスクがあります。放射線治療の適応は照射による再発リスクの低減と照射により副作用が生じるリスクを踏まえて判断することになります。

オカルト乳癌に対する局所療法の治療方針は、ガイドライン上、腋窩郭清術+全乳房切除ですが、MRIでも原発巣が指摘できない場合には、全乳房切除の代わりとして全乳房照射を行うことも選択肢として挙げられています。

今回の場合では、最初に述べたように、鎖骨領域への照射を行った方が良いと判断される病理結果であったと仮定すると、鎖骨領域は一般的には手術の適応とならないこと、乳房は全乳房照射の代わりに全乳房切除という選択肢があること、間質性肺炎という肺への照射のリスク因子があることから、乳房への照射は行わずに肺への照射を避けて、鎖骨周囲や頸部への放射線治療を行うことは、妥当な判断ではないかと思います。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの