タモキシフェンを服用していますが下肢血栓ができました。内服を継続するべきでしょうか?

2020年7月22日   

昨年9月に非浸潤乳癌温存手術を受け、今年の1月初旬に放射線治療も終了しました。手術後からタモキシフェンを処方されていますが、ここ数ヶ月前から器質化した下肢血栓が出来たり消えたりしています。直近の下肢エコー検査で血栓は見つからなかったのですが、数週間前には確かに下肢血栓があったので、出来やすい体質なのかもしれません。
医師からは非浸潤ガンなので、血栓が心配であればタモキシフェンは中止する選択肢もあるが、どうするかは本人が決める事と言われました。今後も予防的にタモキシフェンを服用していきたいですが、血栓症も心配ですし、決めかねています。先生のご意見を頂けますか?

ご質問ありがとうございます。
  非浸潤性乳がん乳房温存術後でタモキシフェン内服中に下肢血栓(深部静脈血栓症)が判明した場合、内服を中止したほうがいいのか、血栓症に対処しながら内服を継続したほうがいいのかを判断するための報告がありません。ひとつだけ確かなのはタモキシフェンの薬剤添付文書に「 本剤の投与により、肺塞栓症、下肢静脈血栓症、脳血栓症、下肢血栓性静脈炎等の血栓塞栓症、静脈炎があらわれることがあるので観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。 」と書かれていることです。したがって、もし私が主治医であれば今回は内服継続よりも内服中止をより勧めると思います。

 非浸潤性乳がん乳房温存術後 に放射線治療を行いタモキシフェンを5年投与した場合、投与しなかった場合と比べて、術後に乳がんが発生する可能性(手術をした側の乳房内再発だけでなく、その反対側の乳房内を含め新たに発生するものを含める)を約25%減らすことができるが、一方で生存率は変わらないという有名な報告があります(NSABP B-24試験)。つまりきちんと術後経過観察をすることが大切で、もし新たに乳がんができてしまった場合も治療をすれば心配ないという解釈ができます。
 ただし、 症状のない下肢血栓(無症候性抹消型深部静脈血栓症を想定)は重症化する可能性は高くはないため、今回の乳がんが、広範囲なもの、悪性度の高いもの、手術で完全に取りきれているか不明瞭など再発リスクが高いと考えられる非浸潤性乳がんであれば、下肢血栓を慎重にフォロー(血液検査、下肢静脈超音波検査を定期的に実施)をしながらタモキシフェン内服継続を勧めることも例外的にはあると思います。
文責:島の病院おおたに 乳腺外科 安井大介