トリプルネガティブ乳癌の治療について教えて下さい

2020年5月23日   

こちらの相談室でいつも勉強させていただいております。ありがとうございます。(経緯)
2019年3月健診で乳癌診断。1年前の健診(マンモ)では異常なし。
術前化学療法(EC⇒ドセタキセル)後12月に全摘手術。
(術後組織診断)
・浸潤腫瘍長径:37mm(化学療法前は45mm)
・組織異型度 核異型度:Grade3
核異型:3 構造異型:3 核分裂像:22/10
・組織型:扁平上皮癌類似形態を示す浸潤性乳癌
・腫瘍壊死:有 脂肪組織浸潤:有
・リンパ管侵襲:無 静脈侵襲:無
・術前薬物療法効果:1a
・リンパ節転移:0/1
・ER:<1% PgR:- HER2:2+(FISH-)
・Ki67:>90
・P63:70%
・P40:70%
・CK14:<10%
上記経過と病理から、増殖能の高い癌だと理解しております。先日こちらの相談室でトリプルネガティブ癌の治療について読ませていただき、とても勉強になりました。私の場合、抗がん癌は「ちょっとしか効かなかった」こともあり、再発転移のリスクは大きいと覚悟していますが、漠然と不安な日々を過ごすよりも、自分の病気のことを正しく理解して挑みたいと思っております。
質問です。
①病理報告の内容「扁平上皮癌類似形態」と免疫染色のP63以下の結果について、どのようなことなのか良く理解できません。悪性度に関係するのでしょうか。
②トリプルネガティブ癌は、「抗がん剤が効くタイプ」「効かないタイプ」などいくつかのタイプに分類されるそうですが、私の場合、EC1回目の後、しこりが急に大きくなり、乳房も赤く腫れて心配しましたが、その後急速に縮小して柔らかくなりました。ドセタキセル途中までは変化ありませんでしたが、3回目の後に急に大きく固くなりました。身をもって抗がん剤の効果と癌細胞の威力を実感しました。「ECは効いた。ドセタキセルは効かなかった。」ということなのか、結果的に「抗がん剤の効果がほとんどなかった。」のか、ECとドセの順番を逆にしたらどうだったのか、とても興味があります。私の癌は「抗がん剤が効かないタイプ」なのでしょうか。
③再発転移した場合の治療の選択肢について教えてください。

①→p63, p40ともに扁平上皮癌のマーカーのようです。ですから、扁平上皮癌の診断のために使った抗体のことです。扁平上皮は食道がんや肺がんでみられる組織型で、乳がんではあまり見られません。乳腺としての性格を失っていることが多いのでER陰性の事が多く、肺がんのようにEGF受容体などが発現していることが多いことがわかっています。
②→しかし、どのような組織型であっても、ER陰性HER2陰性であれば「トリプルネガティブ乳がん」に分類することになっており、化学療法も「アンスラサイクリンとタキサン」による化学療法と画一的になっています。その中も細かく分類すればいくつかの亜型に分けられることが報告されていますが、治療にはまだだ反映されません。質問者の例では、「術前薬物療法効果:1a」と記載されていますので、あまり効果が無かったと考えられます
③→この相談室の再発治療のカテゴリーに「トリプルネガティブ乳がんに対する抗がん剤治療について」という質問がありますので、そちらをご参照ください

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行