ホルモン陽性/HER2陰性乳がんで、術後3年半での縦隔リンパ節再発に対して摘出をしました。今後の治療について教えてください

2021年7月26日   

2017年2月に乳房温存手術を受け、病理検査の結果【ER:90%、PgR:80%、HER2:陰性、Ki-67:25%、腫瘍径3.8㎝(多発)、SLN:転移なし】でした。
妊孕性温存後、5月からTC療法を4クールの予定でしたが、痺れや筋肉痛などの副作用が強く3クールで中止しました。少し間を置いて10月から放射線治療(25日、50Gy)を行いました。その後ホルモン療法を開始し、LH-RHアゴニスト(ゾラデックス)+タモキシフェンの予定でしたが、SSRIの抗うつ剤を服用していたので私が薬の飲み合わせなどを気にしたため、タモキシフェンは無しゾラデックスのみで行ってきました。2年半経った2020年8月、定期検査のCTで前縦隔に腫瘤が見つかり、半年間経過観察したのち、2021年2月のCTでは腫瘤が大きくなっており、腫瘍マーカーCEAも上限値を超えていました。
MRIやPET-CTもしましたが、PET-CTで確認できる転移巣はこの1つのみで、乳がんのリンパ節転移か胸腺腫(または胸腺がん)かは判別できず、5月に摘出手術を受けました。その結果、乳がんのリンパ節転移と判明しました。
すると【腫瘍径:2.7㎝、ER:40%、PgR:0%、HER2:陰性、Ki-67:27.5%】とホルモン受容体を持つ乳がん細胞の割合が減っていました。

主治医からはホルモン療法の継続(ゾラデックス+アロマターゼ阻害薬)と言われ、アロマターゼ阻害薬の服用が始まったばかりです

私としては、今回の再発は縦隔リンパ節への転移ではありますが、その限局した転移巣を取り除けたので、初発の手術後と近い状態(目に見える腫瘍は取り除けたが、全身に微細ながん細胞は残っている)と考え、いま化学療法を行えば次の再発までの期間が延びるのではないか?と思っています。
ガイドラインには、ホルモン陽性患者の再発後の治療は、ホルモン療法をすると書いてありますが、患者の状態(病態、生活、今後の希望)に合わせて化学療法をすることはないのでしょうか?
再発・転移後の根治は見込めないとしても、できるだけ次の再発までの時間を延ばし、QOLを維持した生活を長くできれば、と考えています。

ご質問ありがとうございます。

ホルモン陽性乳がんの術後に、縦隔リンパ節再発に対し手術を受けられ、現在ホルモン療法中の状況ですね。質問者様がおっしゃるように、“限局した転移巣を取り除けたので、初発の手術後と近い状態と考え、術後に化学療法を行う”場合もありますが、その場合は温存した乳房や胸壁、同側腋窩リンパ節などへの再発巣に対し局所療法を行った場合です。質問者様の状況は、現在明らかな病変はないですが、今回の縦隔リンパ節再発は、残念ながら全身への転移の一部と考えて今後の治療を考えていく必要があります。化学療法に関しては、局所再発の場合でも手術後の補助療法に関する試験は少ないですが、切除後に行う化学療法の有効性を検証したランダム化比較試験(CALOR trial)があります。この試験では、ER陽性の場合、陰性の場合と異なり、化学療法による無病生存率や全生存期間において化学療法を行うことによる有意差は認められませんでした。質問者様の場合は、最初の術後よりも発現は低下していますがER陽性であること、QOLが維持できる治療、という点で、現在のホルモン療法を行うのが良いと思います。しっかりホルモン療法を継続して、再発が抑えられるよう願っています。

 

文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子