リンパ節転移が3個あるため再発予防に放射線はしなくていいか聞いたら左であるので心臓に近いからしない方がいいと言われました。 本当でしょうか?

2021年4月27日   

75歳母親の乳がんについて相談です。 乳癌手術後の追加治療についてです。
左浸潤性小葉癌で乳房切除術、腋窩リンパ節郭清をしました。
手術後の病理結果は、
・浸潤性小葉癌
・腫瘤径9.2センチ
・リンパ節転移3個/11
・エストロゲン受容体陽性、プロゲストロン受容体陽性
・HER2陰性
・切除断片陽性
・リンパ管侵襲0
・組織悪制度II
・増殖能ki67:33%
術後治療は、ホルモン療法をすることになり、アリミデックスが内服開始になりました。 腫瘍が大きくて、ki67が高値です。高齢であるため抗がん剤は負担になるためしないのはいいと思うのですが。
リンパ節転移が3個あるため再発予防に放射線はしなくていいか聞いたら左であるので心臓に近いからしない方がいいと言われました
切除断片が陽性というのは、どういう状態なのでしょうか?癌が残っているのでしょうか?胸壁に転移している可能性がある状態なのでしょうか?
あとからネットなどみて、腫瘍が大きいこと、切除断片が陽性となっているので手術で取り切れなかった目に見えないがんを根絶するために、胸壁やリンパ節の再発を防ぐために放射線をした方がいいいいのではないかと考えて心配で不安になってました。
75歳であれば負担を考えて放射線をしないでホルモン療法だけで再発を防ぐには十分なのでしょうか?
放射線はそんなに負担がなさそうなので、
少しでも再発予防になるのなら放射線もしたいと思っています。
負担が大きくないのであればできる治療はしたいという思いがあります!
どうかご回答をお願いします。

ご質問ありがとうございます。

乳癌診療ガイドラインでは、乳房切除後の放射線治療については、腋窩リンパ節転移が4個以上の場合には術後放射線療法が標準治療とされており、転移が1~3個の場合には術後放射線療法が勧められるとされています。したがって、転移が1~3個の場合には、再発リスクを考慮したうえで、施設ごとに放射線治療の適応が判断されているものと思います。

また、断片陽性とはおそらく断端陽性のことと思われますが、断端陽性とは切除断端にがん細胞が露出している状態です。断端陽性の部位(側方なのか深部なのかなど)にもよりますが、断端陽性であれば術後の放射線治療は十分に検討されうる状況かと思います。

心臓への照射線量は、患者さんの胸郭の形と心臓の位置によって異なります。近年は放射線治療技術も進歩しており、現在、一般的に行われている三次元放射線治療であれば、多くの場合、心臓への照射を避けることが可能です。また、通常の方法では照射範囲に心臓が含まれてしまう場合でも、「深吸気息止め法」により心臓への照射を避けることが可能です。この深吸気息止め法とは、息を深く吸って呼吸を止めた状態で照射を行う方法です。息を深く吸うと胸郭が広がり心臓と乳房の間に距離ができるため、心臓への照射線量を下げることができます。

「左であるので心臓に近いからしない方がいいと言われた」とのことですが、これは、放射線治療医の判断でしょうか?乳腺外科の先生のご判断であれば、一度、放射線治療医の診察を受けていただき、どの程度、心臓へ照射されるかを判断してもらってはいかがでしょうか。今回、術後の放射線治療を行わない理由が、再発リスクが低く放射線治療の必要性が低いためとの判断ではなく、心臓への影響を考慮してのことであれば、そのうえで、放射線治療の適応について、再度ご相談していただくのが良いのではないかと思います。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの