遺伝性乳がんです。子供は1人いますが2人目、3人目の妊娠を希望しています。凍結胚移植をする時期はいつが良いでしょうか?

2020年4月30日  , 

はじめまして。教えて頂きたいことがあります。
一昨年、乳がんが分かり、全摘手術と抗がん剤治療を終えました。
パクリタキセルを最後に投与したのが去年の12月なのでもうすぐ半年で今後は無治療の予定です。子供は1人いますが、2人目、3人目の妊娠を希望していたので、乳がんの治療前に婦人科で採卵して凍結胚盤胞が8個あり、年齢的なことから一日も早く移植したいと考えています。
婦人科の先生は、外科の先生からOKが出たら、と言われており治療後概ね半年以降と言われています。外科の先生は、再発のリスクもあるので2年~3年経過をみてから、と言われ、悩んでいます。
というのが、私の場合、一卵性双生児で双子の妹が35歳で卵巣がんになり、亡き実母は40歳で乳がん、祖母も乳がんだったので遺伝子検査を受け、BRCA1陽性とわかり、妹も私も近いうちに残りの乳房と卵巣を予防切除しようと思っています。妹はすでに3人(双子の男児、女児)子供がいます。
遺伝子検査の相談は遺伝子相談外来の先生、凍結胚移植は不妊科の先生、妊娠したら産科の先生、卵巣切除は婦人科の先生、乳がんは乳腺外科の先生、抗がん剤は化学療法科の先生、と主治医の先生がいっぱいいらっしゃって先生によって言われることが異なるので非常に混乱してます。
私達家族としては私の命も優先ですが、2人目、3人目の子供強く希望しています。凍結胚移植や妊娠可能な時期、そのリスク、予防切除の時期、それぞれの順番など、アドバイス頂けますと嬉しいです。
よろしくお願いします。

大変な状況の中、一つ一つ治療に向き合われているご様子、
まずはこれまでの治療を頑張られたことがよくわかり安堵しております。
ご自身のようにトリプルネガティブ乳がんで化学療法後の経過観察に入られた方では、いつでも生殖医療(胚移植)を開始されても乳がんの病状の観点でも問題ないと思います。また、BRCA1の病的変異を持ってらっしゃることからは、やはり40歳までにリスク低減手術として対側乳房全切除や卵巣卵管切除術を検討いただいてよい状況ですよね。そう思うと胚移植は早く開始したいと思われて当然ですし、挙児希望がおありの場合はそのようにお勧めします。
ただ、ご病気の進行度がどうであったかはわかりませんでしたのでリスクまでは申し上げられませんがトリプルネガティブ乳がんの方では術後2~3年の間に再発される方が多く、その後は非常に再発される割合は低くなることがわかっています。このことから、乳腺外科医としては「無事出産できたのは良かったけれども、ひょっとしてお母さんのいない子供になってしまわないか?」という思いもありそのようなコメントになったかと推察しています
ご自身もきっと乳がんを克服されると私たちも願い信じていますがそうでない結果の場合にもご家族が納得できる選択肢として話し合われることが必要です。
婦人科、乳腺外科、遺伝相談外来、化学療法、それぞれの医師がそれぞれの立場でコメントしている内容はどれも正しいと思います。ただ、全員が集まって話し合えるような場があればもっとよいですね。
ご参考になりましたでしょうか。
いろいろなお気持ちや願いをふまえて、ご家族ともよく相談なさってください。
文責:広島大学病院乳腺外科 恵美純子