乳輪乳輪温存して、左胸全摘出いたしましたが、乳頭側浸潤がんで断端陽性となりました。何とか乳輪は残せないでしょうか?

2020年10月27日   

乳輪乳輪温存して、左胸全摘出いたしましたが、乳頭側浸潤がんで断端陽性となりました。私は乳輪が大きいので、全切除で一文字の傷になるように切除するとなると、7センチの傷ができます。乳輪が大きいのでなんとか全切除ではなく、一部切除にしてもらいたいです。手術方針について、主治医を説得する方法はないでしょうか。断端はac領域にあるため下方の乳輪は残せると思いますが、病院の方針で全部取るものと言われてます。
乳頭は乳管があるので取る必要はわかりますが、乳輪は皮膚同様なのではないでしょうか?乳輪の一部を残すとリスクや不都合はありますか?

相談者様のご質問内容から判断すると、乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘出を受けられた結果、病理診断で乳頭直下まで乳癌病変(浸潤癌あるいは乳管内癌)が広がっていたため、再手術(乳頭・乳輪切除)を推奨されている状況と推察します。

一つ目の質問の「乳輪は皮膚同様なのではないか?」ということについてですが、確かに乳輪そのものには皮膚同様、乳腺組織はありません。しかし、乳輪直下には乳腺組織があり、乳頭乳輪を温存した皮下乳腺全摘出の場合には、厳密には少量の乳腺組織が残ることになりますので、乳頭側断端が陽性の場合には、温存した乳頭あるいは乳輪直下の乳腺組織に乳癌病変が残る可能性が高くなります。乳頭乳輪の温存が可能かどうかの判断は、画像診断、手術後の病理診断で行い、遺残癌病変がなく、局所再発のリスクが低い場合のみ、温存可能と判断するのが通常です。乳頭側断端が明らかに陽性の場合は、乳頭乳輪を切除する方が安全性は高いですが、本当に乳癌病変が乳頭あるいは乳輪に遺残しているかどうかは手術後の病理診断でしか分かりませんので悩まれる患者さんもいらっしゃいます。手術前の画像所見、手術後の病理所見、手術後の乳房の状態などを実際に確認して判断する必要がありますので、他の施設の乳腺専門医のセカンドオピニオンを利用されてはどうかと思います。

二つ目の質問の「乳輪の一部を残すとリスクや不都合はありますか?」ということについては、乳癌病変が残っている可能性がある乳腺組織をきちんと切除するのであればリスクや不都合はないと考えます。このことについてもセカンドオピニオンで聞くことが可能と思います。
乳癌の手術は安全性が第一ですが、手術後のQOLを保つためには整容性も同様に大切ですので、相談者様が納得できる内容で次の治療を受けられることをお祈りします。

 

文責:県立広島病院乳腺外科 尾崎慎治