排卵促進剤によって乳がん再発のリスクは上がりますか?

2020年7月21日   

現在乳がんの手術待ちです。ホルモン陽性タイプの乳がんでした。
私はAYA世代なのとパートナーがいることで受精卵と卵子凍結をする予定です。私はがん治療を優先するつもりなのですが、手術のタイミング的に、術前に卵子がとれるため先にも取ろうと婦人科の先生に言われました。なので、今ゴナールエフ注射とレトロゾールの内服を4日間続けています。
しかし、調べるうちに、術前の排卵促進剤は乳がんを進行させる可能性があるとの記事を見ました。
急に怖くなりました。やはり術前に排卵促進剤を投与するのは癌を進行させるのでしょうか。婦人科の先生からはそういう説明は無かったのですが、、、。
ただ、乳がんの先生は特に理由も言わずに術後卵子凍結をしようと言ってました。

AYA世代の乳癌の治療では、乳がんの治療に加えて卵子凍結など、様々なことを短期間で決定しなくてはならないので、負担も大きいこととお察しします。

排卵誘発剤を使用すると一時的にエストロゲンレベル(血中濃度)が上昇するため、乳がんの進行を危惧する意見が昔からありました。

質問者様の心配な点は手術で乳がんをとってしまう前にエストロゲンレベルが上がる状況が来ることでしょうか?

我々治療医のイメージではがんが再発するかしないかは、手術前に転移しているかもしれない微小な乳がん細胞にホルモン剤などの薬剤が効くかどうかにかかっているので、1-2週間程度の短期間のエストロゲンの影響ががんの進行や再発に関わってくるとは考えにくいです。

また、最近ではレトロゾール(乳癌のホルモン剤)を誘発促進に使うのでエストロゲンレベルは低く抑えられるようになっています。

採卵の計画を立てる都合で手術の後に採卵を行うケースが多いですが、術前化学療法を行う前など、乳がんがある状態で採卵を行うケースもよく経験します。採卵のタイミングで予後にあまり大きな違いはないと考えてよいと思いますよ。

 

文責:県立広島病院乳腺外科 野間翠