放射線治療は、術後1年経過して行った場合でも効果があるのでしょうか?

2022年5月18日   

昨年5月に左乳房(扇状)部分切除、リンパ節転移なし、組織学的グレード、核グレード3、HER2陽性、ルミナルB。昨年6月~化学療法(TC療法4クール+ハーセプチン1年)、昨年10月~ホルモン療法。現在ハーセプチン単独治療中。
化学療法後、放射線治療を行う予定でしたが、放射線治療の担当医から、副作用等の点からハーセプチンとの併用は勧めない、ハーセプチンを一時中断して…とお話がありました。一時中断について、主治医と話し合いの結果、局所より全身治療を優先しハーセプチン先行となりました。放射線治療はハーセプチン終了後に改めて検討してはどうかと。私的には化学療法が体調不良(全身発疹等)で3クールで中止した経緯もあり、これ以上の副作用が出るのが心配だったので同意しました。
今月最後のハーセプチンがあるため、来月は放射線治療について検討することになるかと思います。もし1年後の治療では効果がないなら、放射線の治療による副作用等を考えると、しなくてもよいのではと迷っています。現在は発疹は治まりました。若干動悸があります。

ご質問ありがとうございます。

これまでの臨床試験の結果から、乳房温存術後の放射線療法が乳房内再発リスクをおよそ1/3に減少させることが示されており、乳房温存術後の放射線治療は標準治療と位置づけられています。また、化学療法による半年程度の放射線治療開始の遅れは治療効果(局所再発率、無病生存率)に影響しないと報告されており、温存術後に化学療法を行う場合には化学療法を先行することが標準的です。ハーセプチンと放射線治療の同時併用については、ガイドラインでは「抗HER2療法と放射線療法の同時併用は,照射野に心臓が含まれる場合は,心臓への有害事象を考慮し十分注意して行う。」とされており、同時併用を行わない場合には、化学療法後にハーセプチンを一時休薬し放射線治療を行うことが一般的です。今回のようにハーセプチン終了後に放射線治療を行うことが、どの程度治療効果に影響を及ぼすかについての比較試験の報告はありません。そのため、どの程度の影響があるかについて正確に言及することは難しく、その点についてはご理解いただければと思います。しかしながら、先ほども述べた通り、化学療法による半年程度の放射線治療の遅れは治療効果に影響はないとされていることも踏まえると、術後1年経過すると放射線治療の再発予防効果が全くなくなるとは考えにくいのではないかと思います。繰り返しになりますが、乳房温存術後の放射線治療は標準治療であり、今回、放射線治療を省略しても問題ないといえるだけの根拠はありません。放射線治療の得失について、今一度、主治医および放射線治療医とよくご相談いただくのが良いのではないかと思います。

 

文責:広島大学病院放射線治療科 西淵行くの