2度目の乳がんを発症しました。今度はトリプルネガティブ乳がんでした

2022年5月31日   

27歳で乳がんを発症し、EC療法4クール+ドセタキセル4クール、温存手術、放射線、ホルモン治療を5年間行いました。

14年経過した今年、同じ左乳房にトリプルネガティブ乳がんが見つかりました。
部位や乳管病変がないことから、再発ではなく新しくできた癌とのことでした。
先日全摘手術を受け、病理検査の結果は以下です。
腫瘍径10ミリ、腫瘍の露出なし
グレード3、Ki-67 76%
リンパ転移なし、脈管侵襲なし

今後、抗がん剤をするか否か大変迷っており、ご教授いただけませんでしょうか。

前回の治療でエピルビシンを400㎎使用しており、心不全リスクを考慮しEC療法はやめたほうがいいでしょうか?
TC療法のみの場合の奏効率、抗がん剤をしない場合の再発リスクがどの程度か、その他の選択肢などもあればご教授いただけますと助かります。

何卒よろしくお願いいたします。

ご質問ありがとうございます。

以前の乳がんはホルモン受容体陽性で、今回はトリプルネガティブと性質が異なるため、おっしゃるように新しくできたものと考えられます。トリプルネガティブタイプの場合、再発予防の治療は抗がん剤となります。抗がん剤を避けたいお気持ちはよくわかりますが、組織のグレードやKi-67が高値のため、抗がん剤治療を頑張って受けて頂くことをお勧めします。エピルビシンの心毒性に関する累積上限量は900mg/m2とされていますが、前回のEC療法の影響を考えて、当院ではアントラサイクリン系抗がん剤の再投与は行っていません。ご質問の再発リスクですが、“Predict”という海外の再発予測ツールに、年齢、トリプルネガティブ、腫瘍径、グレード、Ki-67、リンパ節転移について情報を入れると、10年生存率は無治療の場合82%、TC療法を行った場合には87%となりました。また、最近の研究(OlympiA試験)では、BRCA遺伝子に変異がある場合、術後化学療法後にPARP阻害薬オラパリブを1年間内服することで、再発だけでなく生存も有意に改善(4年生存率は、プラセボ群86.4% vs.オラパリブ群89.8%)することが示されました。日本でも、乳癌術後に使用できるよう適応拡大を申請中です。BRCA遺伝子変異は血液検査で保険診療により調べることができます。陽性であれば遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)という遺伝性腫瘍(遺伝要因による癌の発症)と診断されるため、結果がご本人だけではなくご家族にも影響します。治療によるメリットは大きいと考えますが、検査前に主治医の先生としっかりお話されたうえでご検討ください。

 

文責:県立広島病院臨床腫瘍科 土井美帆子