術後の乳房に血管肉腫が出来ましたが放射線治療が原因と言われました。受けなかった方が良かったのでしょうか?
2020年5月21日 放射線治療
4年前(33歳時)にトリプルネガティブ乳癌(ステー
その後、2人目の妊娠がわかり、先日、無事に出産できました。月
しかし、2週間ほど前に授乳中、温存した右乳房が赤く腫れて痛み
乳がんの治療をした病院とは違う病院で出産したため、情報を取り
今の先生は悪気はないと思いますが、「あなたの年齢と乳がんのタ
夫は「訴えたい」ともいうのですがそこまでは考えていないし、今
確かに最終的に温存手術を選んだのは私と主人です。
が、こんなことになるなら絶対に温存は選ばなかったです。
終わったことなので、、、とも思いますが、今から命がけで治療を
続発性血管肉腫と乳がん治療の関連性について教えてください。
よろしくお願い致します。
今回の件につきまして、精神的にも大変お辛い状況とお察しいたします。
乳がんに対する放射線治療に関わらず、放射線治療を行った場合にはわずかではありますが放射線治療が誘因となり二次がんが生じることがあります。続発性血管肉腫もこの二次がんにあたります。したがって、放射線治療を行う場合には、放射線治療のメリットとデメリットを踏まえた上で、治療適応を判断します。
これまでの報告から、乳房温存術後の放射線治療は、乳がんの再発を半減させ、乳がんにより亡くなる方を6分の1減少させると見積もられています。したがって、放射線治療により二次がんが生じるリスクよりも放射線治療を行わないことにより再発するリスクの方がはるかに高いため、温存術後には放射線治療が行われています。また、温存手術の場合には放射線治療により二次がんが生じるリスクはわずかながらあるものの、全乳房切除術と比較して治療成績が同等であることが複数の試験で示されており、美容的な側面からも温存手術が可能な症例では温存手術が第一選択となっています。
最近では、乳がん患者さんの中には、放射線療法による二次がんを発症するリスクが高くなるような特定の遺伝子変異をもつ患者さんがいることがわかってきました。したがって、現在ではそのような遺伝子変異を持つ可能性が高い患者さんには、遺伝学的検査を行ったり、全乳房切除術が選択されたりする場合があります。しかしながら、4年前にはまだ一般的ではなく、温存手術が可能な場合には温存手術が勧められていたものと考えます。
今後の治療により全快されることを心より願っております。
文責:広島大学病院放射線治療科 西淵いくの