術前化学療法で完全消失しませんでした。術後治療でカペシタビンを勧められています
2021年5月5日 術後治療方針
はじめまして。
45歳女性です。質問させてください。
ddEC ddPTX後
左乳房乳頭乳輪温存全摘手術(TE挿入)の病理検査結果
左CD 乳管内病変75×52×9 浸潤径 6x6mm
組織型 浸潤性乳管癌 硬がん 組織学的波及度f 脈管侵襲 Ly0 V0
リンパ節転移 Negative sn0/2 核グレード 2
ER(80%)強陽性 PgR(1%)弱陽性
HER2(1+)陰性 Ki67(5%)(術前20〜30%)
ルミナルB型 抗がん剤治療判定効果2a
となり、主治医からカペシタビン6クール後ホルモン療法を提案い
術前化学療法に加えて術後も抗がん剤治療となった事がショックで
上記内容での術後経口抗がん剤治療は妥当でしょうか?奏功してい
結論から言いますと、妥当だと考えます。
術前化学療法としてタキサンおよびアントラサイクリンを含む化学療法を受けた後に病理学的に完全奏効しなかった場合、再発のリスクが20〜30%あると言われています(Breast Cancer (2015) 22:486–495) 。そこで、CREATE-X試験というアジア人を対象とした試験が行われました。(N Engl J Med 2017;376:2147-59.) 。StageⅠ-ⅢB のHER2陰性乳癌患者(日本人606人、韓国人304人)に対しアンスラサイクリンもしくはタキサンを含む術前化学療法を行った後、手術標本で病理学的に完全奏効が得られていない910例の術後において、①標準的な治療のみの患者群と②標準的な治療にカペシタビン6-8コース併用をする患者群に分けられました。その結果、5年後に再発または二次癌がない割合(無病生存率)が、①67.6% 対 ②74.1%で、②カペシタビン群の方が対照群よりも統計学的に成績が良いことがわかりました。質問者さんのように、ホルモン受容体陽性の患者グループでも、②カペシタビン併用群で成績が改善する傾向が確認されています。減量・休薬を要するほどの副作用は、カペシタビン併用群で手足症候群(手掌や足底などに現れる、発赤、腫れ、うずきなど)が11.1%、下痢が2.9%発生しています。
術後もカペシタビンを内服することで、絶対値で6.5%再発を回避できる根拠から、主治医の先生は提案されたものと思われます。なお、この治療法は将来的に標準治療になりうる、と乳がん診療ガイドラインに記載されてています。その効果や、副作用の内容、ご自身の生活に関してよくお考えになり、方針を決められてください。
②奏効していなかったという事は脈管侵襲などがなくても、再発転移の可能性が高いという判断なのでしょうか?
上述の通り、再発の可能性が高いという判断になります。
ご参考になれば幸いです。どうぞよろしくお願い致します。
文責:呉共済病院乳腺外科 網岡愛