Ki67高値の粘液癌です。術後の抗がん剤治療は必要でしょうか?

2019年12月13日  , 

はじめまして。48歳の女性です。
右乳房温存術+センチネルリンパ節生検の後、現在、放射線治療中です。術前は、粘液癌で進行が遅く転移しにくい大人しい癌、抗がん剤が効きにくいタイプとのことで、①手術→②放射線治療→③ホルモン療法で、完治を目指しましょうとの診断でした。しかし、術後の病理検査結果で、Ki67値が51%と高いことから、抗がん剤治療を追加することを勧められています。病理検査結果:粘液癌 腫瘍径14mm 切除断片 陰性 リンパ節転移 なし(センチネル0/1,センチネル周囲0/1) グレードⅠ ER陽性 95% PR陽性 100% HER2陰性 score0 Ki67 51% pT1c N0 M0 StageⅠA Ki67値が51%の場合は、再発予防のために抗がん剤治療が推奨されるのですね?術前の針生検でも35%でしたが、その際にはKi67値について何も説明はありませんでした。抗がん剤治療をしても再発率の圧縮幅は小さいが、少しでも再発率を抑えるため追加してはどうかと。しかし、念のための治療というには、身体へのダメージが不安です。特に髪の毛です。いろいろなサイトの掲示板などを拝見していますと、化学療法の副作用で脱毛し、治療後に髪の毛が元のように戻らず、とても苦しんでいらっしゃるみなさんの言葉から、不安が払拭できません。主治医の先生も看護婦さんも、「髪の毛はちゃんと生えてくるから大丈夫、心配ない。」とおっしゃいます。その他の痺れが残るなどの副作用も、「生活に支障がでるほどではない、心配ないよ。」とおっしゃいます。でも、その言葉とは裏腹に実際に苦しんでいる方がいるのは確かなように感じられます。以上の事から、抗がん剤治療を追加するべきか決めかねています。ご意見をを頂戴出来ますと幸いです。

ご質問ありがとうございます。

ER陽性HER2陰性乳がんでKi67高値もしくは高グレードの症例では化学療法をするかどうか主治医も悩みます。とりあえず化学療法をやれば再発率は下がるのですが、副作用とのバランスを考えるとメリットは少ないのでは?ということをお知りになりたいのだと思います。

質問者の方の病理検査の結果を拝見すると、グレードはIなのにKi67が高く乖離しています。Ki67を除けばすべて化学療法の必要なし(もしくはメリットが少ない)を示しています。このようなときに、私はまずOncotype Dx(オンコタイプ ディーエックス)による再発スコア測定をお勧めします。これにより乳がんの遺伝子発現をみることで再発率や化学療法による上乗せ効果がわかりますので、化学療法をできれば受けたくないと悩んでいる方には後押しになります。ただ、費用が自費になるのが問題です。

いずれにしてもルミナルタイプのステージIなので予後は良い部類に入ります。当院のデータでは5年生存率97%、10年生存率93%です。あとわずかな上乗せを取りに行くのかそれとも十分と考えるのか?これは最終的には質問者の方の考えに依るところが大きいと思います

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行