部分切除後の病理検査で断端に乳管内がんが近接していました。再手術した方がいいのでしょうか?
2020年5月2日 放射線治療
3月下旬に部分切除し、病理結果でin situが断端1〜2ミリ迄に接近しin situの断端浸潤を完全には否定できないが病理報告では無しと
このままだと5月から30回の放射線治療で、断端近接部分にbo
またコロナ状況下で放射線治療は免疫低下し肺炎リスク可能性ある
ご回答お願いします。
・断端についてですが
2014年に浸潤癌における乳房部分切除の切除断端と局所再発に ついて33個の論文の統合解析が発表されていまして断端陽性は断端陰性の2倍の局所再発率となり、 切除断端からの腫瘍までの距離は>0 mm,1 mm,2 mm,5 mmで統計学的に差は認めませんでした。そこで米国SSO/ ASTROガイドラインでは浸潤癌の切除断端について断端陽性は 浸潤癌、非浸潤癌の露出があることと定義しております。また2016年米国SSO/ ASTROが20個の研究を統合解析し、 非浸潤癌部分切除後について切除断端から2㎜ 以上の幅があり全乳房照射をすることで局所再発率が少なくなると しております。ただ2ミリ未満は手術をするべきという証拠はないとも言っており ます。病理診断には各国、地域、 病院や治療医ごとに違いがありますので乳房温存術後の断端診断の 基準は完全に統一されていないのが現状です。日本乳癌学会 乳癌診療ガイドラインにても上記を参考に臨床医の判断にて追加切 除などの手術を考慮することとなっております。もう一度手術の必要性などを担当医と御相談されてはいかがでしょ うか。
・腫瘍の大きさについて術前と術後の違いについて
手術前の説明での大きさは、 超音波検査やMRI検査などの検査から考えられるしこり自体の大 きさを言います。手術後の説明での大きさには二つあり、浸潤癌部分の大きさ(浸潤径) と非浸潤癌と浸潤癌部分を合わせた腫瘍そのものの大きさ( 腫瘍径)です。術後の治療を決める際には浸潤径を用います。浸潤径は小さかったのではないでしょうか? 非浸潤癌の大きさで術後治療を決めることはありませんので、 もう一度主治医に確認された方がよいかと考えます。
・ブースト照射について
ブースト照射による20年の温存乳房内再発率の検討より、 ブースト照射追加により局所再発率が16.4%から12% に低下し、 しかもどの年齢層でも局所再発率の低下を認めた報告があります。日本乳癌学会 乳癌診療ガイドラインにても断端陰性に対するブースト照射は弱く 推奨されています。
・放射線治療による免疫低下について
日本放射線腫瘍学会のホームページから【一般のみなさま】をみていただくとわかりやすいと思いますが、「 早期乳がん手術後に行われる放射線治療は体への侵襲が少なく免疫 機能の低下はほとんどありません。」と表明されております。
乳癌術後の放射線治療はきちんと受けていただくことのほうが大切 と考えます。
文責:呉医療センター乳腺外科 板垣友子