BRCA遺伝子変異陽性です。トリプルネガティブ乳がんでしたが、術後治療は標準化学療法だけでも十分でしょうか?

2020年7月19日  , 

2020/4月m細胞診にて左乳がんと診断され、5/19 乳房切除術+センチネルリンパ節生検を行いました。病理結果は浸潤性乳管癌、トリプルネガティブ、浸潤径0.6cm、リンパ節転移なし、脈管侵襲なし、悪性度3、ki67 60%、遠隔転移なしです。術前に針生検は行っておらず術前化学療法はしておりません。現在、EC4ク-ル+Doc4ク-ルdosedence の予定でEC3ク-ルが終わりました。
母も両側乳癌であり、先月、主治医にお願いしBRCA遺伝子検査を受け、BRCA1の結果でした。今後の化学療法ですが、BRCA陽性の場合プラチナ製剤追加すると効果があるとの情報もみられますが、どうでしょうか?
このままDocだけで良いのか心配です。宜しくお願いします。

術後の治療も無事終えられお疲れ様でした。
トリプルネガティブ乳癌でBRCA1変異陽性ということで、大変によく勉強をされているかと存じます。確かに、おっしゃる通り「転移のある乳癌(手術不能で完治できない転移性乳癌)」では、トリプルネガティブ乳癌の方で特にBRCAに病的変異がある場合にシスプラチンやカルボプラチンによる効果が高いというデータがあります。
TBCRC009: A Multicenter Phase II Clinical Trial of Platinum Monotherapy With Biomarker Assessment in Metastatic Triple-Negative Breast Cancer(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25847936/
ただし、これは日本では再発転移乳癌の方でも適応が認められていないお薬ですし、特に術前後の完治を目指す治療では適応になっていません。
オラパリブ(リムパーザ®)など、PARP阻害剤というお薬もBRCA1または2に病的変異のある方では効果が認められていますが、現状では再発転移のある方に適応となるお薬です。
これらのPARP阻害剤に関しては術前治療や術後の補助化学療法として使用した場合の有効性について現在臨床試験として確認を行われているところですので、数年後にはご自身のような変異のわかっている方では当たり前に選択する薬剤となっている可能性はあります。
ただ、今のところはご自身が受けられた治療が最善で最良の治療と考えます。
文責:広島大学病院乳腺外科 恵美純子