2025年12月13日(土)第167回まちなかリボンサロン(ハイブリット形式)開催の報告

第167回まちなかリボンサロンでは、数年ぶりのWEB&現地でのハイブリット開催ととなりました。

今回は「乳がん術後の生活習慣について」をテーマに、ゆめみなみ乳腺クリニック院長の尾崎慎治先生より、乳がん治療後の生活をどのように整えることが再発予防や健康維持につながるのか、最新のエビデンスを踏まえた解説が行われました。講演では、世界がん研究基金(WCRF)および米国がん研究協会(AICR)の報告や、乳がん診療ガイドラインの知見を基に、運動と食事を中心とした生活習慣のポイントが整理されました。

  

まず、生活習慣と乳がんとの関連について、喫煙・肥満・身体活動が重要な因子であることが示されました。喫煙は、乳がんの再発や死亡リスクを高める可能性が高く、診断後も喫煙を続けた場合にはリスク上昇がほぼ確実とされています。一方、診断後に禁煙した場合は、そのリスクが低下することが報告されており、術後に最も優先すべき生活習慣の改善として「禁煙」が挙げられました。

  

体重管理については、痩せすぎ・肥満のいずれも望ましくないことが強調されました。診断時・診断後ともに肥満は乳がんの再発および死亡リスクを上昇させることが、複数の研究の統合解析から示されています。また、急激な体重減少や大きな体重変動も予後を悪化させる可能性があるため、標準体重を目安に安定した体重を維持することが重要と説明されました。

 

運動については、時間のある人・ない人それぞれに実践可能な方法が紹介されました。定期的な身体活動は、乳がんの再発リスクや死亡リスクを低下させる可能性が高く、週に23エクササイズ(メッツ・時)、あるいは1日8,000~10,000歩程度の歩行が一つの目安とされます。また、まとまった運動時間が確保できない場合でも、階段を使う、速歩で移動する、家事を積極的に行うといった「VILPA(生活の中の短時間・高強度活動)」を積み重ねることで、健康効果が期待できることが紹介されました。

 

食事については、「特定の食品を過度に避ける必要はない」という点が重要なメッセージとして示されました。乳製品の摂取は、適正量であれば乳がんの再発や死亡リスクを上昇させる可能性は低いとされています。ただし、高脂肪乳製品については再発・死亡リスク上昇の報告もあるため、摂り過ぎには注意が必要です。大豆・イソフラボンは、食事からの適量摂取であれば再発リスクを低下させる可能性があり、納豆や豆腐、豆乳などを日常的に取り入れることが推奨されます。

  

一方、サプリメントの高用量摂取については安全性が確立していないため、控えるべきとされました。アルコールについては、適量であれば乳がん予後への悪影響は少ないとされるものの、体調や体質を踏まえた節度ある判断が必要と説明されました。

  

講演のまとめとして尾崎先生は、「乳がん術後の生活で大切なのは、特別なことをするのではなく、禁煙・標準体重の維持・定期的な運動・バランスの良い食事を無理なく続けることです」と述べられました。治療後の生活習慣を整えることは、再発予防だけでなく、心身の健康を保ち、自分らしい生活を続けるための大切な基盤となることが、わかりやすく示された講演でした。

次回、令和8年1月10日(土)の第169回まちなかリボンサロンは、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について考えてみよう」をテーマに、医療法人秋本クリニック地域医療連携室 薬剤師 笠原庸子先生にご講演いただきます。

次回はZoom配信開催となります。ご期待ください。