第171回まちなかリボンサロンでは、「お口からはじめるやさしいインナーケア」をテーマに、miyu’s歯科小児歯科の薬剤師・口腔栄養指導士であり、薬膳カフェ店長も務められる伊木友香先生から、お口の健康を全身の健やかさに繋げるための考え方とセルフケアについて学びました 。お口は単なる食事の道具ではなく「からだの入り口」であり、食べる力は日々を生きる力そのものである――まずその視点が大切な土台として示されました 。

講演では、口の乾き、むせ、滑舌の悪化、食べこぼしといった些細なサインが、お口の機能が衰え始める「オーラルフレイル」のはじまりであることが解説されました 。これを見過ごして「口腔機能低下症」へと進行させてしまうと、将来的に摂食嚥下障害や咀嚼機能不全を招き、最悪の場合は胃ろうや看取りといった深刻な事態に繋がるリスクがあります 。最近では若い世代にも増えているという指摘もあり、年齢に関わらず「悪くなる前に整える」という意識を持つことが重要です 。

お口のトラブルは、単に「菌」だけが原因ではなく、お口の環境、身体の状態、そして生活習慣という3つの要素が複雑に絡み合って起こります 。特に歯周病は、糖尿病や高血圧、認知症などをドミノ倒しのように引き起こす「メタボリック・ドミノ」の起点となり、全身疾患に大きな影響を及ぼすことが示されました 。また、女性の場合は更年期などのホルモンバランスの変化によって、歯肉の炎症や口腔乾燥が起きやすくなるという点も、注意すべきライフステージの特徴として挙げられました 。

日々の養生として、具体的で実用的なアクションも多数紹介されました。
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「あいうべ体操」:口を大きく動かす体操を1日30回を目安に続けることで、口の周りの筋肉を鍛え、口呼吸の改善や免疫力向上に役立てます 。
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「3時間ルール」:飲食後に溶け出したミネラルが唾液の力で元に戻る「再石灰化」の時間を確保するため、食間を3時間空けることが推奨されました 。
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東洋医学の知恵:旬の食材で「気・血・水」のバランスを整える薬膳の考え方を取り入れ、疲れには「なつめ」、むくみには「コーン茶」など、自分の体質に合わせたインナーケアを行うことが提案されました 。

さらにユニークな視点として、姿勢と噛み合わせの関係についても言及されました。猫背などの姿勢の乱れが顎への負担を増やし、食いしばりや口呼吸を招く原因になるため、歯科医院で姿勢診断や体幹トレーニングを行う意義についても触れられました。

歯科医院は「悪くなってから行く場所」ではなく、カフェのような心地よさの中で自分を大切にし、「未来の自分のために通う場所」へ 。単なる表面的なケアに留まらず、自身の生活習慣や身体の状態を客観的に見つめ直し、専門家と相談しながら「再発しづらい環境」を共に作っていくことが、今ある自分の歯をいつまでも守るための鍵であると結ばれました。
次回、令和8年5月9日(土)の第172回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 乳腺外科 笹田伸介先生に、「さいきんの薬物療法のハナシ」をテーマにご講演いただく予定としております。
次回もZoom配信開催となります。ご期待ください。