術後の閉経前ホルモン療法のLHーRH治療について
2021年12月3日 ホルモン療法
お忙しいところ恐れ入ります。
何点か質問があります。
治療の詳細は下記の通りです。
現在35歳、出産経験なし
・2014.9月に乳がん宣告、ステージ2b
・2014.10月~ 術前化療としてFECとタキソール
・2015.5月 右乳房温存+腋下リンパ節廓清の手術
右乳癌 充実腺管癌
腫瘤径:1.2cm 組織HG:Ⅲ
エストロゲン受容体:陽性
プロゲステロン受容体:陽性
HER2:陰性
ki-67:50%
・その後 放射線治療
・現在までホルモン療法をしています。
タモキシフェン毎日+ゾラデックスを12週に1回、のホルモン療法を6年続けてきました。あと4年続きますが主治医から24週のリュープリンへ変更しても良いのではないかと提案されました。針が太いので注射自体の痛みや、注射のスパン、トータルで考えたときの価格等を比較すると負担も軽いので、ということです。
このように同じ効果の薬を治療途中で変更することはよくありますか?
そもそもゾラデックスを10年も継続ということは珍しいのでしょうか。
「ホルモン療法は5〜10年」と言いますが10年続けるのはタモキシフェンだけなのか、注射を長く続けることの弊害がないか心配です。
10年経っても39歳で、その後の方針が明確に提示される感じもなくモヤっとしています。10年以降は治療せず経過観察でしょうか。
それから、最近気分の落ち込みが激しく、ホルモン療法による副作用かと思います。薬なら漢方など穏やかなものが良いですがエストロゲン作用があるものもあり長期使用は不適切という記事を見ました。
対処法はありますでしょうか。
まず、ゾラデックスからリュープリンへの変更についてです。ゾラデックスもリュープリンも卵巣の機能を抑制する薬剤であり、乳がんに対する機序を考えると、効果や副作用には差はありません。どちらの薬剤を選択するかは主治医の判断と患者さんの希望によるところが大きいと思いますし、途中で変更することもあります。違いとしてはいわれるように針の太さが違うこと、また、リュープリンは24週の製剤があるため、注射の回数自体を減らすことができ、医療費も削減できるというメリットはあります。
質問にもあるように、LH-RHアゴニスト製剤(ゾラデックスやリュープリン)の投与期間は2~5年のケースが多いです。大規模臨床試験(SOFT試験)では、術後化学療法を行ったようなリスクの高い、とくに35歳未満の閉経前女性に対しては、タモキシフェンにLH-RHアゴニスト製剤を併用したほうが再発リスクを有意に減少させることがわかっていますが、この投与期間は5年です。ただ、タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤のように何年という明確な基準は乏しいです。年齢が若いこと、リスクが高いことから、10年の投与を主治医に勧められているのだと思いますので、不安や質問があれば主治医と相談をしてください。長期投与で懸念される副作用としては、エストロゲン欠乏による骨塩量の低下がありますので、骨密度を定期的に測定することは必要です。
10年間の内分泌療法終了後は、基本的に投薬などの治療は終了となりますが、残存乳房や対側の乳房の検査は必要です。
最後に、内分泌療法の副作用更年期症状ですが、女性ホルモンを補充する治療はできませんので、更年期症状に有効な漢方薬や、エクオールなどのサプリメントが使われます。こちらも増悪傾向にあるのであれば、主治医との相談をお勧めします。
文責:ひろしま駅前乳腺クリニック 長野晃子