ホルモン陽性再発乳がんですが、リキッドバイオプシーをする意義はあるのでしょうか?また遺伝子検査のメリットはあるのでしょうか?

2020年4月4日  , 

ホルモン陽性乳がんのホルモン治療で、1次治療のフェマーラに対する効果が低くなってくる前にリキッドバイオプシーを行うメリットはありますか?例えば、2次治療にフェソロデックス+イブランスを選択する前に、他のアロマターゼ阻害薬が効きそうかを判断できるとか。そうなれば、フェソロデックス+イブランスは3次治療へ後送りにできます。(呉医療センターの重松医師が「26年後の乳がん肺転移」のQで、薬の選択順について臨床経験をもとにコメントされています。)たぶんリムパーザが使用できるか否かは確認できるとは思いますが、それだけならガン組織を持っている場合、保険適応でNCCオンコパネル/Foundation Oneを必要になったタイミングでやればいいかと。
いずれにしても、リムパーザは使用可能か否かの検査を新ためて受けなければならなかったような。。そもそも、他のガンで保険適応している薬で乳がんに転用できるものなぞ、存在するのでしょうか?
万が一、薬が見つかったとしても、標準治療を無視した順序で薬を使用していくデメリットは大きいと思うのですが如何でしょうか?
肺癌などと違って、乳がんに対する遺伝子検査のメリットが今一つ、わかりません。

リキッドバイオプシーは薬剤の感受性を知りたい癌の組織が得られないような場合にも検査可能なゲノム検査という特徴と、何度も行えるというメリットがあります。
おっしゃるように、ホルモン療法の効果が期待できるがんのタイプであった方で、再発転移に対する一次ホルモン療法の効果が疑わしくなってきたところで次の治療を何にするか悩むところです。
ご指摘のような選択につながることもあると思いますし、そもそもホルモン療法をまだ選択してよいのかどうかという点においても有効である可能性があります。
ガイドラインに沿うならば状況が許せば通常は二次治療もホルモン療法で選択するところを、
リキッドバイオプシーを行うことでESR1の変異などをからホルモン療法は効果がなさそうだという情報が得られる可能性がありますので、効果の薄い治療法を見極めるという大きなメリットがあります。
実際、これまでに二次治療の段階でアロマターゼ阻害剤のみならずフェソロデックスの効果も期待できないという結果を得たことがあります
そのような方ではガイドラインとは異なりホルモン療法を継続せず化学療法に移行しようと早期に考えることができるでしょう。
ただ、結果の解釈がなかなか難しい部分や、毎回何十万という費用がかかるのが現状です。
他癌の適応の薬剤も「固形がん」というくくりで治療研究として使用を検討している治験(フェーズ2が多いですが)が上がってくる可能性は少なからずありますが、実際に投与可能かという点では様々です。
まだまだ今から症例が積み重ねられて情報が充実していく分野です
ご質問いただいた方は医療関係の方と存じますので
適応となる症例があれば経験を今後の医療に反映いただければと思います。
文責:広島大学病院乳腺外科 恵美純子