乳がんと診断されたと同時に妊娠していることがわかりました。主治医からは子供を諦めるように言われましたが他に選択肢はないのでしょうか?

2019年12月9日   

抗がん剤と全摘手術の予定でしたが、先日妊娠していることがわかりました。現在12週です。結婚1X年目、長年、高度不妊治療をしてやっとできた赤ちゃんなので絶対に諦められません。ただ、検診の時までは全くしこりは触れなかったのに、今はポッコリ膨らんだしこりが見ただけでわかり、明らかに進行しています。早く治療しなきゃ、とは思うのですが、乳がんの先生は子供を諦める選択を提示されていて、婦人科の先生には乳腺外科の先生がオッケーしないと責任持てない、と言われていて迷っています。夫は出産と乳がん治療の両方を希望しています。どんな選択肢があり、予後はどうなのかお聞きしたいです。赤ちゃんを残して死ぬのは夫に負担なので。あと、終わったことですが進行の早い乳がんになったのは、高度不妊治療が影響していますか?クロミフェン内服に始まり、ブセレキュア、フォリスチム、HMG、リコンビナント等約10年、治療してました。

質問された方は待望のお子様を妊娠され、現在12週でいらっしゃいますね。体調が不安定でつわりの症状もつらい時期とお察しします。妊娠期の乳がんの治療に関する知見も進んでおり、主治医の先生も十分に心得られた上でお話しされているかと存じます。以下の私共の記載も参考になれたら幸いです。

ER、PgR、HER2がいずれも陰性である乳がんは、「トリプルネガティブ乳がん」と呼ばれます。また、がん細胞が増えようとする力を数字で表したKi67という数値は85%であり高い値であると言えます。このような乳がんの治療には手術だけではなく、抗がん剤治療が必須であると考えます。ただし、お薬が赤ちゃんに与える影響を考慮し、手術も、抗がん剤治療も妊娠中期(16週)から行うことを検討できます。

乳がんの先生から「赤ちゃんを諦める選択肢が提示された」ということですが、先生は非常に慎重に治療について考えておられるために言われたことだとお察しいたします。決して、乳がんの治療をするなら妊娠を諦めなさいということではなく、上記の通り、妊娠期の乳がん治療について乳癌学会の提唱するガイドラインという指針においても詳細に妊娠と治療を両立するにはどうしたらいいかを示しておりますので、どうか心を落ち着かせて先生と治療方針をもう一度話し合ってみていただきたいと思います。

きっとこれから実際に手術日、抗がん剤開始日が決まる時期が16週付近になってくるのではないかとお察しします。

また、不妊治療と乳がん発症リスクとの関連については、海外のデータにおいては不妊治療による排卵誘発剤が乳がん発症リスクを「増加させない」ということが分かっています。日本人におけるデータが乏しいために答えはまだ出ておりません。いずれにしても、これまでの不妊治療について後ろめたく思われることは全くありません。

文責:広島共立病院外科 郷田紀子

 

ご質問内容が慎重に議論する必要がある内容であるため、複数で回答させていただきます。

回答の内容につきましては、基本的には郷田先生が述べられている方針でよいと思います。妊娠中期になりますと手術も化学療法も「注意は必要だが受けることができる」という状態になります。「患者さんのためも乳がん診療ガイドライン」によると妊娠前期は妊娠12週まで、妊娠中期は13週以降と定義されていますので、このお返事が届く頃には妊娠中期となっておられると思います。ですから手術も化学療法も可能な時期になっていることでしょう。ただし、その定義は絶対的なものではなく、同様な症例があったときに広島大学病院の産婦人科の先生にお聞きしたところ「15週以降だったら大丈夫だけど」とのことでしたので、15週以降に手術をしたことがあります。

主治医の先生は、がんの悪性度が比較的高いので一刻も早く治療を開始したいと思っておられるのでしょう。質問者様の乳がんのタイプ、状態であれば妊娠がなければ手術の前に化学療法から開始することが一般的です。ですから、具体的には13週以降に化学療法を開始するということが選択肢としてまずは考えられます。手術を先にしても治療成績は同等ですが、その場合も出産後まで化学療法を延期するわけには行かない(術後8週間以内には化学療法を始めたいので)と思いますので、手術を先にしたとしても化学療法は必要です。

患者さんのためも乳がん診療ガイドライン(日本乳癌学会編)金原出版」に詳しくわかりやすく書かれていますので、ぜひ購入されて読まれることをお勧めいたします。

出産と乳がん、どちらもうまくいくといいのですが、最終的に判断するのは質問者様です。主治医の先生と相談した上でよく考えて後悔のない選択をなさってください。応援しています!

 

文責:広島大学病院乳腺外科 角舎学行