非浸潤性乳がんの術後にタモキシフェンを内服していますが、下肢に血栓が見つかりました。中止した方がいいでしょうか?

2020年7月26日   

石灰化による非浸潤乳がんの為に、左乳房温存手術後に放射線治療を行いました。術後の病理検査ではがん細胞は綺麗に取り切れたと言われました。予防的にタモキシフェンを処方されて、服用していましたが、子宮筋腫が巨大化してしまい、子宮全摘手術を受けました。子宮筋腫手術を受ける前にたまたま受けた下肢エコー検査で、小さな器質化した下肢血栓が見つかりましたが、器質化している為、手術は予定通り行いました。その後、下肢エコー検査を受けたところ、1回目は器質化血栓が見つかり、2回目は血栓は見つかりませんでした。ちなみに1回目と2回目に検査を受けた病院は異なります。乳腺の医師は2回目(直近)の検査では血栓が見つからなかったのだからといって、タモキシフェン服用は継続してよいのではないか?しかし、私の場合は非浸潤乳癌がんで手術で癌は取り切れており、放射線治療も行っているので、90%は治っている。
あとの10%については、タモキシフェン服用すると5%程度の再発防止なので、服用中止の選択肢もあると言われました。
一般的には20~30%くらいの予防出来ると思っていたのでは、5%とはかなり低い数字だったので、私の場合はタモキシフェンの効果はあまりないという事でしょうか?
私個人のデータをみて、医師が判断した数値という解釈なのでしょうか?5%でも再発予防になるのであれば、継続したいと申し出て、継続する事になりました。しかし、また副作用で下肢血栓が出来てしまうのは心配で、気持ちが揺れています。先生のご意見をお聞かせ願えますでしょうか?

こんにちは。非浸潤乳癌に対して乳房温存手術と放射線治療を受けられ、その後タモキシフェンを内服されているのですね。子宮筋腫の増大と下肢静脈血栓ができたとのことで、タモキシフェンの継続を悩まれているのですね。ここでは乳癌の病理が、非浸潤乳管癌であると仮定してお答えします。(非浸潤乳癌の多くは乳管から発生する非浸潤乳管癌(Ductal carcinoma in situ: DCIS)ですが、そうでないタイプもあります。)

乳癌診療ガイドラインで、「ホルモン受容体陽性非浸潤性乳癌に対して術後内分泌療法は推奨されるか?」という項目があります。

・術後タモキシフェンによる再発抑制効果は、① 温存乳房内の非浸潤癌の再発は減少させるが、浸潤癌の再発は減少させる効果は見られなかった。② 反対側の乳房では、非浸潤癌・浸潤癌共にその発症を減少させることができた。③ 乳癌による死亡は減少させることはできなかった。

結論として、「非浸潤性乳管癌に対する乳房温存手術後の内分泌療法は、乳房内の再発を予防することが目的であり、生存率には影響しないので、費用や副作用によるQOLの低下を考えると、患者さんによって希望がばらつくことが大きいと考えられる」となっていて、弱く推奨するとされています。

個人的には、非浸潤癌術後の内分泌療法は行っていません。

質問者様は血栓ができたこともあるとのことなので、タモキシフェンは終了しても良いように思います。血栓は下肢だけでなく重要な臓器の血管にできる可能性もありますので、その可能性を理解した上で、乳房内再発を減少させる目的で内服を継続することも選択肢のひとつとは思います。

以上をふまえて、今まで信頼関係を築いてきた主治医の先生とよく相談して決められるのが良いと思います。

参考になれば幸いです。

 

文責:広島総合病院乳腺外科 梶谷桂子