EC療法をやっていますが、腕に血管痛があり突っ張ります。血管炎と言われましたが大丈夫でしょうか?
2020年10月30日 化学療法
右乳房全摘して、9月から抗がん剤治療(EC療法)
術後の抗癌剤治療を受けられ、血管痛が出ているとのこと、心配なお気持ちをお察し致します。E C療法は、静脈炎・血管痛が出現しやすい治療法と言われています。がん研究会有明病院からは、64人の乳癌患者さんへアントラサイクリン系薬剤(質問者さんの場合はEC療法のE: エピルビシン)を含む化学療法を行ったところ、血管痛が初めて出現した時期は、1コース目:4人、2コース目:26人、3コース目:14人、4コース目:3人と、2コース目で初めて血管痛が出現する人が多かったという報告が有ります。
また、コース数を重ねるごとに出現率が高まる一方、治療コースを重ねても血管痛の程度は変わらないという傾向も確認されています。ボルタレンテープ、ロキソニンテープ、ロキソニンゲル、リンデロン軟膏などの鎮痛薬が処方された患者さんでは、痛みが軽減することもあるようです。
静脈炎は点滴終了後にも症状が出現することもあり、今回の主治医の先生もそのように判断されたのだと思われます。対処方法としては、血流の良い太い静脈をできるだけ使用し、関節部位を避ける、毎回できるだけ穿刺部位を変える、長く針を留置していた静脈、過去に静脈炎を起こした血管はさける、ホットパック(アイスノンのようなジェル状パックを温めたもの。温めた濡れタオルなどを代用している施設もあるようです)で血管を温めて血管を拡張させ、薬の接触を減らすことなどが有ります。
そのような対策でも症状が軽快しない場合に、CVポートの検討が勧められます。CVポートは鎖骨の下の太い血管や頚部静脈、上腕の静脈などを経由し心臓の右心房手前にチューブの先端を留置することになります。太い血管は細い血管よりも血管炎を起こしにくいため、その点に関してはメリットが大きい治療です。器具を体表に留置する際の合併症の可能性はありますので、メリット・デメリットを主治医の先生とよく相談され、ご検討されては如何でしょうか。
今後の術後治療が、無事に完了されることを祈っております。
文責:呉共済病院乳腺外科 網岡愛