第176回まちなかリボンサロンでは、「乳がん治療はどうやって決めているの?」をテーマに、島根大学医学部附属病院 乳腺センターの角舎学行先生からお話しいただきました。乳がんは手術・薬物療法・放射線治療など治療の種類が多い一方、医師がどのような考え方で治療方針を決めているのかを、実際の症例をイメージしながら分かりやすく解説していただきました。

治療方針を決めるうえで最も重要なのが、針生検の病理結果から判明する「サブタイプ」だといいます。乳がんは大きく、ホルモン受容体とHER2(ハーツ)というタンパクの陽性・陰性の組み合わせで、ホルモン受容体陽性の「ルミナルタイプ」(全体の約6割)、HER2陽性タイプ(約2割)、どちらも陰性の「トリプルネガティブ」(約15%)に分類され、これに年齢や患者本人の希望、遺伝子変異の有無も考慮しながら治療の流れを組み立てるとのことです。

ルミナルタイプは基本的に手術を先に行い、病理結果を踏まえて薬物療法や放射線治療、ホルモン療法を組み立てます。腫瘍が3センチ以下であれば部分切除が可能なことが多く、大規模な臨床試験により部分切除でも放射線を併用すれば全摘と同等の生存率が得られることが示されているといいます。近年は針を刺して熱で焼灼する「ラジオ波焼灼療法(RFA)」という切らない治療も一部の条件下で行われています。また、センチネルリンパ節に転移があっても、条件によっては腋窩リンパ節郭清(わきの下のリンパ節を取り除く手術)を省略できることも、複数の臨床試験で示されているとのことでした。

一方、HER2陽性やトリプルネガティブタイプは、先に薬物療法(抗HER2療法や免疫療法を含む化学療法)を行い、がんの反応を見てから手術を行う「術前療法」が標準的だといいます。薬物療法でがんが完全に消えたかどうかによって、その後の治療内容を調整できるためで、消え残った場合には、より効果の高い薬剤に変更することで治療成績が向上することも分かっているそうです。また、診断から手術までの期間は3ヶ月以内に収めることが望ましく、遅れると予後が悪化するというデータも紹介されました。

乳がんの約1割を占める遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)についても触れられ、BRCA遺伝子に変異がある場合はPARP阻害薬がより効果を発揮すること、また対側の乳房に対する予防的な手術も選択肢になることが紹介されました。

最後に先生が強調されたのは、これらはあくまで一般的な治療指針であり、実際には年齢や患者本人の希望を踏まえて、主治医とともに一つひとつの治療方針を決めていくものだという点です。分からないことや希望があれば遠慮せず主治医に相談してほしいというメッセージで講演が締めくくられました。

次回、令和8年10月3日(土曜日)の第177回まちなかリボンサロンは、「一緒に学ぶ超音波検査の世界 ~検査技師は何を見ている?~」をテーマに、広島大学病院 診療支援部の臨床検査技師・石川舞先生にご講演いただく予定です(テーマは決まり次第お知らせします)。
次回もZoom配信にてお届けする予定です。ぜひご参加ください。