まちなかリボンサロン
ハイブリット形式で開催していましたが、現在はオンラインのみで行っています。

2024年12月7日(土)第155回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

12月の第155回まちなかリボンサロンは、島根大学医学部付属病院 乳腺センターの角舎 学行 先生に『乳がん薬物療法の進歩と今後の展望』をテーマにご講演いただきました。

 

まず、最初に乳がんの治療成績は年々飛躍的に改善し続けており、中でも薬物療法の進歩がその理由との事でした。2008年までは2種類に分類していた乳がんを2008年以降は4種類に分け、それらに合った治療薬を開発する事で効果を上げているということでした。

  

抗HER2治療薬が開発され、再発率の低下に目覚ましい効果を上げるなかで、2017年には、HER2陰性の患者について、術前化学療法により腫瘍が完全に消失しなかった方に対して治療を加えようと新たな分類が提言され、薬物療法への反応によって治療法を選択するという、日本発の新しい考え方(Respomse-guided therapy)が確立しました。

  

更には、20200年にはHER2陽性の患者についての臨床が始まり、Respomse-guided therapyの再確認、2021年には更に、HER2陰性でリンパ節転移が4個以上もしくは腫瘍径5cm以上の患者の分類が提議され、臨床が始まりました。

 

その後、2022年8月、9月、11月にも新たな分類と臨床が始まり、それに伴い免疫療法が登場しました。免疫療法とは、本来身体に備わっている免疫システムが発見できないがん細胞を『見える化』する療法であり、それによって自身に備わった免疫システムががん細胞を攻撃するという画期的な療法であり、本来は治りにくい肺がんなどの治療にも非常に効果的という事です。

このように、当初は2種類であった分類が、現在は10に分類され、それぞれに合わせた治療薬を新たに開発・承認されてきたことで、治療成績が向上し続けているのです。

また、新しい薬剤以外にも、投与方法の工夫や支持療法の進歩などにも、治療成績の向上に寄与しているということでお話を締めくくられました。

視聴者からは、「最新のサブタイプ分類とそれに対応する治療のまとめが大変参考になりました」などといった感想が寄せられました。

令和7年1月11日の第156回まちなかリボンサロンは、リオールジム代表取締役の奥松 功基 先生に『乳がん経験者における運動の重要性~筋肉・体力アップにお勧めの運動とは~』をテーマにご講演いただきます。

2024年11月9日(土)第154回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

11月の第154回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 作業療法士 金山 亜希 先生に『術後の肩の運動とリンパ浮腫予防について』をテーマにご講演いただきました。

 

まず、最初に術後の肩関節運動についてお話がありました。廃液のためのドレーンが入っている間は、肩を挙げるのは90度までに制限しているが、日常生活でも極端に制限する事なく、むしろ積極的に動かしてほしいということでした。

 

ドレーンが抜けてからは肩関節の制限は解除し、可動域を広げるためにリハビリテーションをしていきます。目標は手術前と同じ可動域に戻すこととしています。

次にリンパ浮腫予防について説明がありました。リンパ浮腫とは手術や放射線治療によってリンパの流れが悪くなり起こるもので、0期から3期までに分類されています。

  

手術をして、塞がったリンパ節があっても別のリンパ節が発達している人は発症しにくく、そうでない人は発症するとの事です。数十年後に発症する事もあり、手術直後にむくまなかったからと安心することはできないということで、一度発症すると完治する事はないそうです。

リンパ浮腫の症状や、発症の見分け方などをお教えいただきました。リンパ浮腫の危険因子としては、放射線治療、感染、肥満、化学療法がほぼ確実と言われており、日々の生活で自己管理ができるのは、感染と肥満です。

  

スキンケアで乾燥を防ぎ、ストレスの発散や十分な睡眠など、常に体調を整えることが肝要であり、肥満防止のために適度な運動を行い、有酸素運動を推奨されていました。

また、長い時間同じ姿勢でいないように心がけることや、局所的な締め付けを避ける、重いものは持たないようにする、適切な運動をすることがリンパの流れを保つことにつながるのだとお教えいただきました。

視聴者からは、「腋下リンパ節を切った後の状態を、詳しく知ることが出来て良かった」などといった感想が寄せられました。

令和6年最後の第155回まちなかリボンサロンは、島根大学医学部付属病院 乳腺センターの角舎 学行 先生に『乳がん薬物療法の進歩と今後の展望』をテーマにご講演いただきます。

2024年10月5日(土)第153回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第153回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 薬剤部 布施 直美 先生に『上手なお薬との付き合い方とは?』をテーマにご講演いただきました。

 

まず、抗がん剤の生い立ちについてご説明をいただきました。抗がん剤の登場から、徐々に研究が進み、個人個人に合わせた治療が可能になったという事です。

 次に、新しい治療法である、がんゲノム医療についてご説明いただきました。がんゲノム医療とは、標準治療では改善が無かった患者さんを対象に行う治療法で、患者のがん細胞の遺伝子(ゲノム)情報を解析し、その結果に基づいて最適な治療法を選択する医療です。

従来のがん治療は、がんの種類や部位に基づいて標準的な治療を行うことが多かったのに対し、がんゲノム医療は患者一人ひとりの遺伝子変異を特定し、その個別のがんに最も効果的な治療を行う「個別化医療」を目指すものです。それに合わせて、新薬も開発され、進歩し続けているという事でした。

 

そのような状況下、薬剤師がどのようにがん治療に関わっているのか、調剤の方法等についてお教えいただきました。

 

続いて、ポリファーマシーについてお教えいただきました。ポリファーマシーとは、複数の薬剤を同時に使用することを指し、複数の薬を併用することで、薬同士が互いに影響し合い、効果が減弱したり、副作用が増加することがあります。

ポリファーマシーは適切な管理が重要で、定期的な薬の見直しや、処方内容の一元化、薬を正しく服用することで、ポリファーマシーに伴うリスクを最小限に抑えることができるとのことでした。

  

また薬品以外にも薬と食べ物でも相互作用が起こる事があり、その代表的な例として、グレープフルーツや牛乳による薬への影響をお教えいただきました。

 

最後に、今年10月から、後発医薬品(ジェネリック薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望する場合には「選定療養(せんていりょうよう)」として扱われ、負担増となったという説明があり、セミナーは締めくくられました。

視聴者からは、「主治医だけではなく、薬剤師はじめ様々な職種が治療に関わっていることを再認識した」といった感想が寄せられました。

次回11月の第154回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 作業療法士 金山 亜希 先生に『術後の肩の運動とリンパ浮腫予防について』をテーマにご講演いただきます。

朝夕は涼しくなってきましたが、日中との寒暖の差が激しい日が続いています。くれぐれもご自愛ください。

2024年9月7日(土)第152回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第152回まちなかリボンサロンは、広島市立北部医療センター安佐市民病院 病理診断科 金子 真弓 先生に『乳がんのより深い理解のために ~病理が導く治療方針~』をテーマにご講演いただきました。

 

まずは、病理とは何かについて教えていただきました。病理学は形態学を基盤としており、主に顕微鏡を使って診断を行います。病理診断は治療方針に大きな影響を与える重要な役割を果たします。特に、良性か悪性かの判断や、治療方法の選択に必要な情報を提供することが、病理診断の主な役割です。

 

人相からある程度性格がわかるように、顕微鏡で細胞を観察し、正常な細胞と比較してがんの特徴を見つけ出し、それに基づいて診断します。そして、個々のがんの特徴に応じて治療方針を決定するとのことです。

 

がんは遺伝子の異常によって発生する病気ですが、実際には毎日約5,000個ほどの遺伝子異常を持つ細胞(がんの芽)が生じているそうです。しかし、それらのほとんどは免疫や修復酵素によって排除され、がんに進行することは少ないとのことでした。

 

細胞とその仕組みについて教えていただいた後、実際に「がん」がどのような病気であるかについて説明がありました。がんは、細胞分裂の過程で遺伝子に異常が生じることで発生します。がん細胞は、通常の細胞と異なり、細胞分裂による増殖が止まらなくなるという特徴を持っています。

 

続いて、乳腺診療における病理の役割について、術前、術中、術後に分けて詳しく説明していただきました。

 

最後に、これまでのがん治療法に加えて、新たな治療法として注目されている「がん免疫療法」について、実際に見える画像などを交えて詳しく説明があり、セミナーは締めくくられました。

視聴者からは、「病理の話は何度聞いても難しいが、例え話のおかげで理解ができ、とても分かりやすかった」といった感想が寄せられました。

次回10月の第153回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 薬剤部 布施 直美 先生に『上手なお薬との付き合い方とは?』をテーマにご講演いただきます。

まだまだ暑い日が続いております。くれぐれもご自愛ください。

2024年8月3日(土)第151回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第151回まちなかリボンサロンは、島根大学医学部付属病院 乳腺センター角舎 学行 先生に『より綺麗に乳房を残すための手術~ラジオ波焼灼療法と内視鏡補助下手術~』をテーマにご講演いただきました。

本題に入る前に、1988年から現在まで、乳がんは一貫して増え続けていることや、年間発生数が最も多いが比較的治療は進んでいる事など、現在の乳がんに関する情報提供がありました。

 

その後、乳がん治療におけるタイプ別治療法や治療薬、手術の進歩や変遷などを説明いただき、現在では乳房温存療法と乳房全切除術を比較して、その後の生存率には差が無い事が明らかになったとお教えいただきました。

  

そのため現在は、乳房を必要最小限切除し、筋肉を切らない、できるだけ綺麗な乳房を残すという取り組みが進められているです。

そこで最近注目されているのが、ラジオ波焼灼療法です。もともとは肝臓がんに使われていた治療法で、腫瘍に針を刺して電流を流し、その摩擦熱で腫瘍を焼くという方法です。

  

適応基準は限られますが、治療に要する時間は長くとも10分程度で、乳房に傷が残らない、変形が少ないなど大きなメリットがあります。デメリットとしては、手術をしないので、もし焼けていない箇所があっても判るまで時間がかかることや、病理所見が得られないことが挙げられました。

治療には認定を受けた術者が必須となっており、現在は全国で67名が術者認定されています。中四国では鳥取、香川、高知以外に術者がいるという状況です。

次に、内視鏡補助下手術についてご説明をいただきました。

  

脇に小さな2cmほどの傷を入れ、そこから内視鏡カメラを入れて、できるだけ傷跡を小さくすることが可能で、従来手術と比較して乳房の変形も少なく、本来の患者さんには良い選択してあると言えます。

 

最後に、究極の手術とは切らない事であり、術前薬物療法で腫瘍が消失したら、手術をしなくても良いのではないかという取り組みを現在は進めていることを仰られ、セミナーを締めくくられました。

聴講者からは「(新しい治療法や薬の進歩を知って)未来に希望を感じることができた」「デメリットもしっかり教えてもらい良く解った」などの感想が寄せられました。

次回9月の第152回まちなかリボンサロンは、広島市立北部医療センター安佐市民病院 病理診断科 金子 真弓 先生に『乳がんのより深い理解のために ~病理が導く治療方針~』をテーマにご講演いただきます。