まちなかリボンサロン
ハイブリット形式で開催していましたが、現在はオンラインのみで行っています。

2026年3月7日(土)第170回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第170回まちなかリボンサロンでは、「肩の運動とリンパ浮腫予防」をテーマに、広島大学病院 作業療法士の金山亜希先生から、乳がん手術後の生活をより健やかに、安心して過ごすための具体的な運動法とセルフケアのポイントについて学びました 。手術後の肩の可動域を維持すること、そしてリンパ浮腫のリスクを正しく理解し予防していくことは、術後の自分らしい生活(QOL)を支える車の両輪である――まずその大切な視点が、講演の冒頭で示されました 。

  

講演の前半では、手術後の「肩の運動」の重要性が解説されました。手術直後からリハビリを始めることは、肩関節の拘縮(固まり)を防ぎ、スムーズな日常生活への復帰を助けます 。金山先生からは、時期に合わせた適切な動かし方や、痛みや違和感がある際の注意点が丁寧に説明されました 。特に「振り子運動」や「壁歩き」など、自宅でも手軽に続けられるストレッチの重要性が、実技を交えてわかりやすく示されました 。

  

後半では、多くの患者さんが不安を感じる「リンパ浮腫」について、正しい知識と具体的な予防策が整理されました 。リンパ浮腫は、単なる「むくみ」ではなく、重だるさやジュエリーの跡が消えないといった「わずかな変化」に早めに気づくことが何より大切です 。講演では、浮腫を引き起こすきっかけとなる「炎症(感染症)」「肥満」「過度な負荷」の3つのリスク因子に焦点が当てられました 。

日々の生活で取り入れられる具体的な養生法として、以下のポイントが紹介されました。

  

「スキンケア」と「清潔」:皮膚のバリア機能を保つため、保湿を徹底し、深爪や日焼け、虫刺されなどの小さな傷から菌が入る「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」を防ぐことが重要です 。

「深呼吸(腹式呼吸)」:深く息を吸うことで横隔膜を動かし、全身のリンパの巡りを助ける「ポンプの役割」を活用することが推奨されました 。

「適度な体重管理」:肥満はリンパ管を圧迫し、浮腫を悪化させる要因となるため、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることが大切です 。

  

金山先生は、「頑張りすぎず、毎日の生活の一部として自分の体と向き合う習慣を作ってほしい」と強調されました 。無理に重いものを持たないといった制限ばかりに目を向けるのではなく、正しい知識を持って「何がリスクになり、どう動かすのが安全か」を知ることで、活動範囲を狭めずに過ごしていくための前向きな提案がなされました 。

  

気になる症状や変化を感じたときは、一人で抱え込まず、リハビリ専門職や医師に相談しながら「自分に合ったケア」を続けていきましょう、というエールで締めくくられました。

次回の第171回まちなかリボンサロンは、miyu’s歯科小児歯科の伊木友香先生をお招きし、「お口からはじめるやさしいインナーケア」をテーマにご講演いただく予定です。
次回もZoom配信開催となります。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2026年2月7日(土)第169回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

 第169回まちなかリボンサロンでは、「こころとからだにやさしい漢方のおはなし」をテーマに、広島大学病院 薬剤部の櫻下弘志先生(がん専門薬剤師)から、漢方を安心して役立てるための考え方と注意点を学びました。漢方はドラッグストアやネットでも手に入り、暮らしの中で取り入れやすい反面、「自然のものだから安全」「体にやさしいから大丈夫」と思い込んで自己判断で続けてしまうと、合わなかったり副作用が出たりすることがある――まずその点が大事な前提として示されました。

 

西洋薬が“狙ったところにピンポイントで効かせる”のが得意なのに対し、漢方は複数の生薬を組み合わせて、体全体のバランスを整える考え方です。だからこそ、同じ症状名でも、体質やその時の状態によって合う処方が変わります。講演では、体力の傾向(虚・実)、冷えや熱の感じ方、むくみや血の巡りなどを手がかりに「証」を見立て、問診や診察を通して調整していくことが大切だと説明されました。顔色や表情、声の様子、生活習慣や食の好みなど、いろいろな情報を合わせて考えるのが漢方の特徴で、医師と相談しながら“自分に合う形”を探していくことがポイントです。

  

漢方の働きとしては、自律神経を整えて心身のバランスを保つこと、血流の改善により冷えや痛み・むくみ・疲れに関わること、ストレスによるゆらぎを和らげること、気力や食欲を支えることなどが紹介されました。また、がん治療の場面では、漢方は手術や抗がん薬などの代わりではなく、治療に伴うつらさを和らげたり体調を整えたりして、治療を続ける力を支える「補助的な役割」が基本であることも、わかりやすく整理されました。

 

具体例として、むくみや水分バランスの乱れに使われる五苓散、こむら返りなど急な筋肉のけいれんに用いられる芍薬甘草湯などが紹介されました。一方で、注意したい生薬として「甘草」と「麻黄」が挙げられました。甘草は多くの漢方に入っているため重なりやすく、むくみや血圧上昇などにつながることがあります。麻黄は動悸などが出る場合があり、ほかの薬との組み合わせにも気をつけたいところです。漢方同士でも西洋薬とでも、併用するときは一度確認するのが安心、というメッセージは参加者にとって実用的でした。

  

飲み方の工夫も紹介されました。粉が苦手な方は少量のお湯で溶かしたり、服薬ゼリー(オブラート)を使ったり、メーカーによっては錠剤やカプセルがあるので剤形を確認する方法もあります。食前が基本とされることが多いものの、飲み忘れたら食後でもよく、胃が弱い方は食後にする場合もある、など“続けやすさ”への配慮も示されました。漢方は「自分に合う形」で使ってこそ力を発揮します。気になる症状があるときは、医師や薬剤師に相談しながら、無理なく日々の養生に取り入れていきましょう、という提案で締めくくられました。

次回、令和8年3月7日(土)の第170回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 作業療法士 金山 亜希 先生に、「肩の運動とリンパ浮腫予防」をテーマにご講演いただく予定としております。次回もZoom配信開催となります。ご期待ください。

2026年1月10日(土)第168回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第168回まちなかリボンサロンでは、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について考えてみよう」をテーマに、医療法人秋本クリニック地域医療連携室 薬剤師 笠原庸子先生にご講演いただきました。ACPは日本では「人生会議」とも呼ばれ、人生の最終段階を見据え、自分が大切にしたい価値観や医療・ケアの希望について、前もって周囲と話し合い、共有しておく取り組みです。

 

ACPという言葉から「終末期」や「死」を連想し、重たい話題と感じる方も少なくありません。実際、過去にはACP啓発ポスターが「死を強く想起させる」として議論を呼んだこともありました。しかし笠原先生は、「ACPは決して死を前提にした話ではなく、年齢や病気の有無にかかわらず、すべての大人に関係するものです」と強調されました。

ACPで話し合うのは、延命治療の可否といった医療行為だけではありません。自分がどのような生活を大切にしたいのか、どこで過ごしたいのか、家族や周囲にどのように関わってほしいのかなど、「その人らしい生き方」そのものがテーマになります。また、ACPは一度決めて終わりではなく、健康状態や生活環境の変化に応じて、何度も見直していくことが重要だと説明されました。

 

一方で、日本ではACPが十分に浸透しているとは言えません。その背景として、家族中心の意思決定文化や、はっきり言葉にせず察することを重んじる風土、死に関する話題を避ける傾向などが挙げられました。さらに、医療者自身もACPを実践できていないケースが多く、制度や文化の両面で課題が残っている現状が示されました。

ACPの大きな利点は、いざという時の迷いや不安を減らせることです。突然の病気や事故で自分の意思を伝えられなくなった場合、家族や医療者は「本人ならどうしただろうか」と悩みながら判断を迫られます。ACPを通じて日頃から考えや思いを共有しておくことで、周囲は本人の価値観を手がかりに選択することができ、心理的な負担を軽くすることにつながります。

 

また、本人にとっても「自分の考えを言葉にしておく」ことは、自分の人生を主体的に捉えることにつながります。ACPは、最期の医療を決めるためだけのものではなく、「自分らしい生き方」を周囲と確認し合うための対話であり、今をどう生きるかを考えるきっかけにもなります。

笠原先生は、ACPの本質について「最期の選択を決めることではなく、迷いや不安を減らすための準備です」と語られました。本人が意思を言葉にしておくことで、いざという時に家族や医療者が判断を迫られる負担を軽くすることができます。それは本人にとっても、周囲にとっても大きな支えになります。

 

講演の締めくくりでは、「ACPは特別な場で行うものではなく、日常の会話から始められます。何気ない会話からスタートしてみるのも良いのではないか」「やらないと後悔するというものではなく、『やって見ても良いな』と思ったら、一度手に取ってもらいたい」と呼びかけがありました。人生の最終段階だけでなく、これからの生き方を考えるための対話として、ACPの意義を改めて考える機会となる講演でした。

  

次回、令和8年2月7日(土)の第169回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 薬剤部 日本医療薬学会 がん専門薬剤師 櫻下 弘志 先生に、「こころとからだにやさしい漢方のおはなし」をテーマにご講演いただく予定としております。

次回もZoom配信開催となります。ご期待ください。

2025年12月13日(土)第167回まちなかリボンサロン(ハイブリット形式)開催の報告

第167回まちなかリボンサロンでは、数年ぶりのWEB&現地でのハイブリット開催ととなりました。

今回は「乳がん術後の生活習慣について」をテーマに、ゆめみなみ乳腺クリニック院長の尾崎慎治先生より、乳がん治療後の生活をどのように整えることが再発予防や健康維持につながるのか、最新のエビデンスを踏まえた解説が行われました。講演では、世界がん研究基金(WCRF)および米国がん研究協会(AICR)の報告や、乳がん診療ガイドラインの知見を基に、運動と食事を中心とした生活習慣のポイントが整理されました。

  

まず、生活習慣と乳がんとの関連について、喫煙・肥満・身体活動が重要な因子であることが示されました。喫煙は、乳がんの再発や死亡リスクを高める可能性が高く、診断後も喫煙を続けた場合にはリスク上昇がほぼ確実とされています。一方、診断後に禁煙した場合は、そのリスクが低下することが報告されており、術後に最も優先すべき生活習慣の改善として「禁煙」が挙げられました。

  

体重管理については、痩せすぎ・肥満のいずれも望ましくないことが強調されました。診断時・診断後ともに肥満は乳がんの再発および死亡リスクを上昇させることが、複数の研究の統合解析から示されています。また、急激な体重減少や大きな体重変動も予後を悪化させる可能性があるため、標準体重を目安に安定した体重を維持することが重要と説明されました。

 

運動については、時間のある人・ない人それぞれに実践可能な方法が紹介されました。定期的な身体活動は、乳がんの再発リスクや死亡リスクを低下させる可能性が高く、週に23エクササイズ(メッツ・時)、あるいは1日8,000~10,000歩程度の歩行が一つの目安とされます。また、まとまった運動時間が確保できない場合でも、階段を使う、速歩で移動する、家事を積極的に行うといった「VILPA(生活の中の短時間・高強度活動)」を積み重ねることで、健康効果が期待できることが紹介されました。

 

食事については、「特定の食品を過度に避ける必要はない」という点が重要なメッセージとして示されました。乳製品の摂取は、適正量であれば乳がんの再発や死亡リスクを上昇させる可能性は低いとされています。ただし、高脂肪乳製品については再発・死亡リスク上昇の報告もあるため、摂り過ぎには注意が必要です。大豆・イソフラボンは、食事からの適量摂取であれば再発リスクを低下させる可能性があり、納豆や豆腐、豆乳などを日常的に取り入れることが推奨されます。

  

一方、サプリメントの高用量摂取については安全性が確立していないため、控えるべきとされました。アルコールについては、適量であれば乳がん予後への悪影響は少ないとされるものの、体調や体質を踏まえた節度ある判断が必要と説明されました。

  

講演のまとめとして尾崎先生は、「乳がん術後の生活で大切なのは、特別なことをするのではなく、禁煙・標準体重の維持・定期的な運動・バランスの良い食事を無理なく続けることです」と述べられました。治療後の生活習慣を整えることは、再発予防だけでなく、心身の健康を保ち、自分らしい生活を続けるための大切な基盤となることが、わかりやすく示された講演でした。

次回、令和8年1月10日(土)の第169回まちなかリボンサロンは、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について考えてみよう」をテーマに、医療法人秋本クリニック地域医療連携室 薬剤師 笠原庸子先生にご講演いただきます。

次回はZoom配信開催となります。ご期待ください。

2025年11月1日(土)第166回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第166回まちなかリボンサロンは、島根大学医学部附属病院乳腺センターの角舎学行先生をお迎えし、「乳がんの化学療法について ~周術期編~」をテーマにご講演いただきました。

角舎先生の講演では、乳がんの薬物療法の中でも「術前・術後の化学療法(手術期の治療)」に焦点を当て、サブタイプ別の治療戦略、薬の組み合わせ、近年の治療方針の変化などについて詳しく解説されました。

  

乳がんは、下記のように大きく4つに分類され、「ホルモン受容体陽性(ルミナル型)」「HER2陽性」「トリプルネガティブ」の3つを中心にサブタイプ分類が行われ、それぞれで治療方針が大きく異なり、治療の目的や意義を説明されました。

  1. トリプルネガティブ(HR陰性・HER2陰性)
  2. ルミナル(HR陽性・HER2陰性)
  3. HER2陽性(HR陰性・HER2陽性)
  4. 両方陽性(HR陽性・HER2陽性)
  • HER2陽性:化学療法+抗HER2療法(ハーセプチンなど)が基本
  • トリプルネガティブ:化学療法が中心、症例により免疫療法を併用
  • ルミナル:基本はホルモン療法だが、リスクが高い場合は化学療法を追加

 

HER2陽性乳がんでは、化学療法に加えて抗HER2薬(トラスツズマブなど)を併用することが標準治療となり、高い治療効果が示されています。ホルモン受容体陽性(ルミナル型)の場合はホルモン療法が基本ですが、再発リスクが高い場合には化学療法を追加します。一方、ホルモン療法も分子標的薬も効かないトリプルネガティブ乳がんでは、化学療法が治療の中心となり、適格な患者では免疫療法を併用するケースが増えています。

 

また、薬剤や投与スケジュールによって再発抑制効果と副作用の強さが異なり、「強ければ必ず良いわけではなく、副作用とのバランスが重要」と説明。特にドーズデンス(2週間ごとに投与する強化スケジュール)は効果が高い一方で副作用も強いため、個々の患者の体力や生活と調和させながら選択することが求められます。

  

乳がんの化学療法では、身長と体重から算出される投与量が明確に決められており、治療効果を最大化するためには、規定量を守り、治療間隔を延長させないことが重要です。副作用を恐れて自己判断で治療をスキップしたり、投与量を減らしたりすると、再発抑制効果が下がる可能性があると説明されました。

また、術前化学療法(手術前に行う薬物治療)についても触れられ、HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんでは、術前治療の効果がその後の治療内容を決める大きな判断材料となる一方、ルミナル型では効果が予後と必ずしも一致しないなど、サブタイプによる違いについても解説されました。

  

講演の最後に角舎先生は、「乳がんの化学療法には確立されたセオリーがあり、医療者と患者が治療の目的を共有し、必要な治療をきちんとやり遂げることが大切」と述べられました。医学的根拠に基づいた詳細な解説は参加者からも「治療の全体像がよく理解できた」と好評でした。

乳がん治療はますます進歩を続けています。正しい知識と医療者との協働が、より安心した治療につながることを実感できる講演となりました。

次回、令和7年12月13日(土)の第167回まちなかリボンサロンは、ゆめみなみ乳腺クリニック院長尾崎 慎治先生に、「乳がん術後の生活習慣について 」をテーマにご講演いただく予定としております。

次回は現地開催&Zoom配信のハイブリット開催です。ご期待ください。