2026年8月1日(土)第175回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第175回まちなかリボンサロンでは、「乳房再建 迷っている方へ、再建後の方へ」をテーマに、広島大学病院 形成外科の佐々木彩乃先生からお話しいただきました。乳房再建の講演は毎年恒例とのことで、これから再建を考える方と、すでに再建を終えた方の両方に向けて、幅広い内容でお話しいただきました。

  

乳房再建には、乳がんの手術と同時に行う一次再建と、時間を置いて行う二次再建があり、ティッシュエクスパンダー(組織拡張器)で皮膚を伸ばしてから完成させる方法もあります。もっとも多いのは、乳がん手術と同時にエクスパンダーを入れ、後日インプラントや自家組織に入れ替える「一次二期再建」だそうです。再建方法は大きく、インプラントによる人工物再建と、背中や腹部から組織を移植する自家組織再建に分けられます。インプラントは傷が乳がん手術の傷のみで手術・入院期間も短い一方、経年劣化で将来的な入れ替えが必要になり、自家組織は採取部に傷跡が残り手術時間も長い一方、柔らかく自然な質感で長期のメンテナンスが不要という違いが紹介されました。

 

放射線治療を受けた、あるいは受ける予定があると再建できないと誤解されがちですが、時期や方法に注意すれば治療後でも再建は可能とのことです。エクスパンダーは金属を含み留置中の照射はできず、先に再建を済ませてから放射線を当てるなど主治医との調整が必要になるといいます。仕事や家庭の事情といったライフスタイルも選択の軸になり、エクスパンダーは約1年留置できるため焦らず検討する時間があるそうです。最終的には、選択肢を知り比較したうえで自分の価値観に照らし医療者とともに決めていく「シェアード・ディシジョン・メイキング(共同意思決定)」という考え方が紹介されました。

 

再建後は、自家組織なら術部の膨らみやボリューム減少、インプラントなら炎症や感染など自分で気づきやすい合併症がある一方、破損や被膜拘縮(周りの組織が硬くなる変化)は気づきにくく、入浴や着替えの際に胸の状態を確認する習慣と、年に一度の診察・画像検査が大切だと説明されました。下着は術後1か月までワイヤーなしを、自家組織なら形を整える専用ブラを勧めることが多く、その後は手持ちの下着の紐やワイヤーを調整する方法も紹介されました。スキンケアは、手術や放射線治療で皮膚のバリア機能が低下するため、入浴後10分以内の保湿とぬるま湯・泡での優しい洗浄の習慣づけが勧められました。

 

一連の再建を終えたあとに改めて手術を行う「三次再建」にも触れられました。インプラントの経年劣化による左右差や、対側の乳がん発症時の修正、まれに起こる皮弁壊死など理由はさまざまで、いずれも現在は保険適用の範囲で対応できるといいます。自費診療の脂肪注入という選択肢もありますが、生着率は3〜4割程度にとどまり、複数回の手術と費用がかかる点が留意点として挙げられました。

 

最後に先生が強調されたのは、再建方法に決まった正解はなく、大切なのは自分の決め方に納得できるかだという点です。合併症を過度に恐れず、日々の観察とケアを習慣にすることで、再建した乳房を長く良い状態に保てるというメッセージで講演が締めくくられました。

次回、令和8年9月5日(土曜日)の第176回まちなかリボンサロンは、島根大学医学部附属病院 乳腺センターの角舎学行先生に「乳がん治療はどうやって決めているの?」をテーマにご講演いただく予定です。
次回もZoom配信にてお届けする予定です。ぜひご参加ください。